コールセンターを運営していると、ストレスを抱えて休職・退職してしまうオペレーターの多さに悩んでしまうことがあります。
このような悩みを抱えている場合は、オペレーターのストレス状況を把握してケアする必要があります。ストレスチェックを実施して適切な対策を行えば、ストレスを抱えて休職・退職するオペレーターを減らすことに繋がります。
今回はコールセンターのストレス対策にも役立つ「ストレスチェック制度」について解説します。ストレスチェック制度は義務化されたため、ぜひ記事を読んでみてください。
ストレスチェック制度とは?
ストレスチェック制度とは、事業場で働く労働者に検査を受けてもらい、ストレスの状況を把握してメンタル不調が起きないように予防するための制度です。
それ以外にも、企業は検査結果を分析して「どのようなものが、労働者の負担になっているか?」を特定して、職場環境の改善をする制度目的も含まれています。
2014年6月に労働安全衛生法が改正されて、2015年12月からストレスチェックが義務化(労働安全衛生法第66条の10)されました。
ストレスチェックが必須の企業
ストレスチェック制度が義務付けられている対象事業場は、常時50人以上の労働者を使用している事業場です。この労働者は正社員だけでなく、パートタイム労働者や派遣労働者も含まれます。
使用している労働者が50人未満の事業場は対象外となりますが、労働者のメンタル不調の予防ができるため、可能な限り実施することが推奨されています。
ストレスチェック義務化の背景
2015年12月1日にストレスチェック制度が義務化された背景には、メンタルヘルス不調を訴える労働者が増加してきており、休職や退職に追い込まれる人も増加していることが挙げられます。
厚生労働省の「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス不調で1ヵ月以上の休職や退職した労働者がいる事業場の割合は10.1%。前年比の9.2%より0.9%上昇しています。
この調査結果からも分かるように、労働者が休職や退職に追い込まれないように、ストレスチェック制度を実施して高ストレスの人をケアする必要が出てきたのです。
コールセンターでストレスチェックを行うべき理由
「アポ獲得のノルマがきつい」「クレーム対応でストレスが溜まる」など労働者がストレスを抱えやすいコールセンターは、ストレスチェックをした方が良いでしょう。ここでは、コールセンターでストレスチェックすべき理由をご紹介します。
オペレーターをストレスから守るため
コールセンターで働くオペレーターはストレスにさらされています。
コールセンター業務は顧客からのお問い合わせに対して素早く的確に応えなければいけません。そのため、商品やサービスに関する幅広い知識が必要となり、それらを覚えなければいけません。
SV(スーパーバイザー)など上長のサポートが受けられないと、顧客の質問に回答するまで時間がかかります。そして、顧客を長時間待たせてしまいクレームに発展してしまうのです。
このように、オペレーターはストレスにさらされているため、ストレスチェックを実施してメンタル不調に陥らないようにケアする必要があります。
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離職を防止できるため
コールセンターの離職率は、あらゆる業種のなかでも高いです。
「コールセンター白書2021」では、「新人オペレーターの離職率は30%以上」と回答しているコールセンターの割合は37.5%にも昇ります。多くの新人オペレーターが早期に離職しているのです。
株式会社BizHitsの独自調査「コールセンターから異職種への転職理由ランキング」で第1位となった理由は「ストレスが多い」です。
この2つの調査からストレスでコールセンターを離職するオペレーターが多いことが伺えます。つまり、ストレスチェックを実施して、メンタル不調に陥らないように予防すれば離職を防止できるのです。
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サービス品質を上げるため
オペレーターのメンタル不調を予防すれば、顧客対応の品質があがります。その理由はストレスを取り除き、精神的な余裕が生まれれば意欲的に働いてもらえるためです。
メンタル不調に陥ったオペレーターはミスを繰り返してしまい、顧客からクレームを受けて落ち込んでしまうという負のスパイラルに陥りがちです。オペレーターのパフォーマンス低下は顧客満足度の低下につながるため気をつけなければいけません。
このような問題も、ストレスチェックを実施してケアすることで防止できるでしょう。
ストレスチェックのやり方
コールセンターでストレスチェックを実施すべき理由をご紹介しましたが、やり方は以下の通りです。
1.ストレスチェック制度導入を表明する 2.ストレスチェック制度の実施体制を定める 3.年1回ストレスチェックを実施する 4.ストレスチェック結果を通知する 5.高ストレス者に面接指導を推奨する 6.ストレスチェック結果に基づく職場改善を行う |
ここでは、各手順について詳しく解説します。
ストレスチェック制度導入を表明する
最初にストレスチェック制度を実施するために、ストレスチェック制度を導入することを表明します。
安全衛生計画や新年度の事業計画を立案する際に、ストレスチェック制度の導入を発表しましょう。その際に、ストレスチェックの手順を簡単に説明しておくと、実施体制や個人情報保護の対応方法が検討しやすくなります。
ストレスチェック制度の実施体制を定める
次にストレスチェック制度の実施体制を定めます。事業場の衛生委員会などで、以下の内容を審議して社内規定を定めていきます。
[実施体制]
ストレスチェック制度の実施体制(担当者と産業医の連携方法)を決める
[実施方法]
- 質問紙による調査かICTを活用した調査かを選ぶ
- ストレスチェック結果の通知方法を決める
- 高ストレス者への面接指導の推奨方法を決める
心の健康に関する調査データはデリケートな情報のため、個人情報として保護できる体制を整えなければいけません。そのため、調査データを取り扱う人には個人情報保護の教育啓発をしておきましょう。
年1回ストレスチェックを実施する
企業は年1回ストレスチェックを実施します。事業場の労働者に調査票を配布して記入してもらってください。
ストレスチェックの調査票は「厚生労働省ストレスチェック実施プログラム」にて無料で配布されています。また、ストレスチェッカーやこころチェッカーなどの有償ツールなどもあります。自社の運用に見合うものを選びましょう。
ストレスチェック結果を通知する
ストレスチェックを受けた労働者に対しては結果を通知します。心身の健康に関する検査結果データはデリケートに扱わなければいけません。そのため、ストレスチェックツールにログインして検査結果を見てもらうなど、情報漏洩しないように気をつけてください。
高ストレス者に面接指導を推奨する
ストレスチェックの検査結果で、心身のストレス反応の評価点数が高い労働者には産業医の面接指導を推奨しましょう。
顕著な症状は現れていなくても、メンタル不調のリスクがある人には、面接指導を受けてもらうことで疾病予防ができます。産業医の面接指導の結果を参考に就業上の措置を講じていきます。
ストレスチェック結果に基づく職場改善を行う
ストレスチェックの結果は個人のストレス状況を把握するためだけでなく、労働者が働きやすい職場づくりにも役立てられます。
ストレスチェックの調査票に職場環境等の評価項目を設けておき、低い数値の箇所を改善していくと従業員満足度(ES)を上げていけます。
また、ストレスチェック実施の報告書は5年間保存しておきましょう。
コールセンターのストレス対策
ストレスチェックの検査結果が悪い数値の場合、どのように職場改善をしてストレス対策をすれば良いのでしょうか? ここでは、コールセンターのストレス対策をご紹介します。
ストレス相談窓口を設置する
オペレーターの中には、上司や同僚に悩みを打ち明けられないという方もいます。そのような人が仕事やキャリア、こころの健康などの相談ができる相談窓口を設置しましょう。社内で相談窓口を設置する方法の他にも、外部に委託する方法もあります。
SV(スーパーバイザー)を教育する
コールセンターにはスタッフを管理しているSVがいます。SVの主な業務は従業員教育や従業員管理です。
SVのマネジメント力が劣るとオペレーターへの適切な指導が行えません。その結果、オペレーターもどのように業務を進めるべきか悩んでストレスを抱えてしまうのです。
このような問題が発生しないように、SVの状況判断力や管理力、対応力を教育するようにしましょう。
FAQシステムを導入する
コールセンターはサービスや商品に関する幅広い知識が求められ、さまざまなことを覚えなければいけません。しかし、新人オペレーターはすぐに覚えることは難しいでしょう。
このような問題を解決するために、求めている情報に即アクセスできるFAQシステムを活用してみてください。FAQシステムを導入してナレッジ共有すれば、知識がなくても顧客の質問に回答できるようになります。
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まとめ
コールセンターで働くオペレーターはストレスにさらされています。ストレス対策を行わなければ、オペレーターが離職・退職してしまうでしょう。
そのため、ストレスチェックを実施して、オペレーターのストレス状況を把握してケアしなければなりません。また、検査結果を参考に働きやすい職場づくりを行う必要があります。
この記事ではストレスチェック制度の導入方法を詳しく解説しました。ぜひ、この記事を参考にしながらストレスチェックを実施してください。