ディズニーランド、ディズニーシーを運営するオリエンタルランドの事例で注目を集めているWFM(ワークフォースマネジメント)。
WFM(ワークフォースマネジメント)とは、適材適所の人材配置を行うことで、人権費を抑えようというマネジメント手法です。特にコールセンターなど「稼働率」が重要な職種で重要な考え方になります。
この記事では、WFM(ワークフォースマネジメント)の基本から導入メリット、WFMシステム導入の成功事例を紹介します。
※この記事は2022年1月21日に公開したものを加筆して更新しています
WFM(ワークフォースマネジメント)とは?その意味と基礎知識
「WFM」とはワークフォース・マネジメントの略で人材配置や人材活用を最適化することでコストを低減するためのマネジメント手法です。
「固定費の大部分を占める人件費の最適化を図りたいけれど、天候や季節で需要は変動するから難しい。」など管理職が抱える課題を解決するための手法となります。
ただ人員削減することを指すのではなく、「サービスやパフォーマンスの質を低下させない」という点がポイントになります。
WFM/ワークフォースマネジメント とは?
WFMの市場規模
米国調査会社ReportOceanの調査報告書によると、2019年度のWFM市場規模は43億ドル(約4,860億円)で、2027年度まで年平均10.2%ずつ市場拡大するとのこと。
この調査結果から、多くの企業がWFMを活用して、人材配置の最適化に取り組んでいることが伺えます。そのため、WFMの仕組みや活用事例について学んでおくことをおすすめします。
WFMツール・システムの需要が増えている
WFMツールとは、過去データから要因需要を予測して、従業員の勤務条件やスキルを加味した最適なシフトを作成できる製品です。「需要予測」「人員手配・人員管理」「スキル管理」「シフト作成」「効果検証」の機能があり、人材マネジメント業務の効率化が図れます。
コールセンターでWFMが必要とされる理由
WFMは、規模を問わずコールセンター業務で必要とされることが多いです。その理由は、コストのほとんどが人件費を占める労働集約型の業務になるからです。
コストを抑えようと、人員を削減する、もしくは対応時間を減らしてしまうとサービスの質の低下を招いてしまいます。そこでサービスの質を落とすことなく、効果的に人員配置を行うために登場したのがWFM(ワークフォースマネジメント)という考え方、そしてシステムなのです。
そのような現場にWFMが必要な理由について解説します。
労働力不足問題を解決するため
日本は少子高齢化社会で労働力不足問題が深刻化しています。そのため、日本ではWFMを活用した人材マネジメントが注目を集めているのです。
WFMで人材マネジメントを行い、適材適所に人材配置を行えれば、最小限の人員でコールセンターを回していけます。
サービス品質を向上させるため
業務量に応じた適切な人材配置が行えなければ、業務過多を招いてサービス品質が低下します。その結果、顧客側からクレームが発生します。
例えば、コールセンターであれば「電話をしても、すぐにサポートセンターに繋がらない」などのクレームが発生しやすいです。このようなクレーム対策のためにも、入電量に応じた適切な人材配置をする必要があります。
需要予測の精度を上げるため
これまで需要予測は管理職の勘や経験を参考にして行われていました。しかし、天候や季節、市場変化など外的要因で業務量は大きく変動します。これらを経験や勘で予測しても、正確なデータを導けません。
近年ではAIが登場し精度が大きく上がっています。AI技術が搭載されたWFMツールを活用すれば、需要予測の精度が大幅に上げられます。デジタル技術の発展によりWFMが大きな注目を集めたのです。
WFMのメリット
WFMの活用には、「適切な人員配置」「無駄な人件費の削減」「サービスの品質向上」「従業員のエンゲージメントの向上」というメリットがあります。WFMシステムはコールセンターの生産性向上には欠かせないものなのです。
適切な人員配置
各従業員が保有しているスキルや、業務で求められるスキルを把握しておけば、適材適所の人材配置が行えて業務効率化が図れます。
例えば、入電予測に応じてオペレーターを配置することで、待ち呼を減らし、応答率や稼働率を向上させることができます。
無駄な人件費の削減
労働集約型産業で適材適所に人材配置すれば、人件費削減に繋がります。しかし、コスト削減を目的に無計画に人員削減すると業務過多となり、逆に労働力過剰は人件費の無駄になるため注意しなければいけません。
WFMを活用すれば、最大のパフォーマンスが発揮できる適切な人材配置が行えます。業務過多の問題を防止しながら、無駄な人件費の削減ができます。
サービスの品質向上
WFMツールで需要予測して人材配置を行えば、サービスの品質向上が図れます。適切な人材マネジメントを行うことで、オペレーターが入電に追われることなく、落ち着いて対応できるため顧客満足度アップにも繋がります。
従業員のエンゲージメントの向上
WFMで人材配置を行えば、1人当たりの業務負担を最適化することもできます。業務上の無駄を省き、削減できたコスト分を従業員の給与や賞与に還元すれば、従業員エンゲージメントの向上も実現できます。
WFMツールでできること
WFMに興味を抱いたら、コールセンターのマネジメント業務を効率化できるWFMツールを検討してみてください。ここでは、WFMツールでできることをご紹介します。
需要予測
過去データを参照して「季節」「曜日」「時間」などで、どれぐらいの人員が必要になるか予測します。需要予測の機能を活用すれば、業務過多を防止して無駄な人件費を削減できます。
人員手配・人員管理
適切な人材配置を行うためには、職能別やスキル別などの人員管理が必要です。需要予測機能と人員管理機能を連携させれば、適材適所の人材配置が行えます。
スキル管理
従業員の保有スキルを管理しておけば、必要に応じて瞬時に確認でき、適切に人材配置ができます。また、職務上必要なスキルを身に付けていない従業員に研修を実施するなど、人材育成にも活用できる機能です。
シフト作成
従業員が希望する勤務シフトと需要予測、人員管理を照らし合わせながらシフト作成ができます。会社独自の所定ルールを登録しておけば、自動でシフト作成できるWFMツールも登場しており、シフト作成業務の効率化が図れる機能です。
WFMシステム導入の成功事例
次にWFMシステムで業務効率化や生産性向上に成功している企業の事例をご紹介します 。
株式会社オリエンタルランドの事例
ディズニーランドの運営などを行う株式会社オリエンタルランドはWFMを導入することで適材適所の人材配置を行っており、従業員に残業させない仕組みを整えています。
その結果、契約社員の残業が少ない企業ランキングでも1位に輝き話題を集めました。お客様へのおもてなしの極意が注目されるオリエンタルランドですが、従業員が働きやすい職場環境にも配慮しています。
ワークフォースマネジメントシステムによって、ゲストの需要に応じたキャストの仕事量を日別時間帯別で算出し、より効率的効果的にキャストの勤務時間を設定することができるようになりました。
パーク内の各施設(アトラクションやショーの運営、飲食施設・物販施設)の運営に必要な人員数は、季節や曜日・時間帯等によって施設ごとに異なっているため、本システムを使い、さまざまな状況に応じた仕事量の予測精度を上げています。
さらに、本システムにキャスト個々人の勤務希望時間帯を取り込み、より効率的効果的な配置をタイムリーにできるようになりました。
株式会社オリエンタルランド『アニュアルレポート 2018』より
LINE株式会社の事例
無料通話アプリを展開するLINE株式会社ではWFMに組織的に取り組み、WFMポジションの担当者が「業務量予測」「人員準備」「人員配置」「リアルタイムマネジメント」を行っています。
属人化や過去の経験や勘に頼る業務をなくし、データに基づくマネジメント手法に切り替えて業務効率化に取り組んでいます。また、業務量が突然膨れ上がることがあるため、WFM業務で人材配置の最適化を実現しています。
株式会社プレステージ・インターナショナルの事例
株式会社プレステージ ・インターナショナルは、自動車の事故対応などカスタマサポートのBPO事業を展開しています。自動車の事故対応のお問い合わせ業務は24時間365日対応で、祝日や天候により呼量(コールセンターにかかってくる電話の量)が変動します。
これらの予測を経験や勘で行うことは簡単ではありません。この問題を解決するためにWFMツールを導入しました。
システムロジックに基づく「直近3ヵ月の呼量」「昨年同月の呼量」で予測を行い、業務効率化を実現しています。顧客の安心・安全を守るサポート体制の整備に成功している企業として注目を浴びています。
まとめ
マネジメント手法で注目を集めるWFMを活用すれば、コールセンターのサービス品質の低下や業務過多を防止しながら、人件費の無駄を削減できます。
人件費の削減だけではなく、応対品質の向上、従業員エンゲージメントの向上にも繋がるマネジメント方法です。さまざま企業で働きやすい職場づくりのためにWFMが導入されているため、これを機会に検討をしてみましょう。
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