電話営業によって心を動かされ、顧客になることはよくあります。
とはいえ、電話営業を嫌っている顧客がいることも事実です。そのため、「電話営業するのがつらい」「毎日が電話営業で憂鬱」と感じてしまう営業パーソンもいるようです。
この記事では、電話営業がクレームを受けやすい理由やクレームの対処方法について解説します。また、クレーム対応でやってはいけないことやクレームを減らす工夫についても紹介します。ぜひ、最後までご覧ください。
電話営業はクレームを受けやすい
テレアポやインサイドセールスなどのいわゆる電話営業は、見込み顧客を獲得するために重要な手段です。
しかし、電話だけでアポイントを取ることは簡単ではありません。100件電話して、1件アポイントが取れたらいいとする考え方もあるほどです。
逆に顧客の立場からすると、頻繁に電話営業がかかってくると「またか、面倒くさい」「仕事を中断させられて迷惑」という感情も生じます。
このような理由から、電話営業はクレームを受けやすいといえます。
営業クレームが発生する理由
営業クレームが発生するには、いくつかの理由があります。ここでは主な営業クレームが発生する理由について紹介します。
1.営業禁止なのに架電してしまった
明らかに自社に責任がある場合や営業担当の言動などに問題がある場合はクレームになります。
たとえば、「もう電話営業はしないで欲しい」と伝えていたのに別の営業担当者が架電してしまった、既存の取引先にアプローチしてしまった、電話NGの時間にしつこく電話してしまったなどのケースはクレームになります。
2.誤解・過剰な期待
電話営業は音声だけでやりとりをするので、相手の勘違いをきっかけにクレームに発展することもあります。「約束の日時を勘違いしていた」というのもよくあるトラブルです。
また、「誤解を与えてしまう言い回し」や「誇張した表現」はクレームのもとです。サービスに対して過度な期待を抱いているときもクレームが起こりやすくなります。
3.言った言わないのトラブル
営業相手と営業パーソンの間で認識がズレてしまうこともあります。その原因は言い間違いや聞き間違い、言ったつもりになっていたということがほとんどです。
約束事ややりとりの内容をあいまいにしていると「言った言わない」のトラブルが発生し、クレームに発展してしまいます。
営業クレームの対応方法【自社に非がある場合】
クレーム対応には自社に「非がある場合」と「非がない場合」があります。自社に非がある場合は謝罪が必要です。心を込めて謝罪するようにしましょう。
冷静に対応する
クレームになった場合、相手は興奮しているか怒っていることがほとんどです。まずは、落ち着いて話ができる状態にすることがポイントです。
たとえ、クレームの電話であっても、はっきりとした声で、丁寧にわかりやすく話しましょう。たとえ理不尽に侮辱されたとしても、ここは冷静に対応することが大切です。
話の腰を折らずに話を最後まで聞く
相手を落ち着かせるためにも、話の腰を折らないことが重要です。話を途中でさえぎることなく、相づちを打ちながら最後まで聞きます。
相手が興奮している時に反論すると、その反論が正しいとしても感情悪化を招く恐れがあります。
できるだけ記録する
クレームはしっかりと記録を残すことも大切です。クレームは話が長くなりがちです。しかし、正確な記録がないと、その後のフォローが難しくなります。また、その記録によって自社の対応に非があったのかどうかの判断ができます。
自社に非があるかないかをまず確認
クレームに対しては謝罪することがほとんどです。しかし、謝罪の仕方によっては、自社が全面的に非を認めたと相手が考えてしまうこともあるので注意が必要になります。
後々、「謝罪をしたのだから補償しろ」というような話につながってしまうケースもあります。だからといって、まったく謝罪しないのでは、余計に怒らせてしまうことにつながります。
このような場合、限定して謝罪する方法が有効です。たとえば、「ご不快な思いをおかけして申し訳ありません」など、クレームの内容そのものではなく、顧客に不快な思いをさせてしまったことについて謝罪するわけです。
「責任者を出せ」と言われても焦らない
クレーム対応はエスカレーションすることも多いです。エスカレーションはエスカレともいい、一次対応で解決できなかった場合に、責任者に判断を仰いだり、電話対応を交代することをいいます。
エスカレーション とは?
エスカレーション(escalation)とは、「上昇」「拡大」など日常の意味の他に、ビジネスシーンでは「上申」という意味で使用されます。
日本では「エスカレ」など略されて使用されたりします。
ビジネスでのエスカレーションは一般的に、一次対応者がスキルや権限などにより対処できない問題を上位の役職・専門職を持つ意思決定者に報告し、それ以降の判断や業務を任せるという意味で使用されます。
一次対応者の個人判断で行われる場合もありますが、トラブルを避けより効率的な業務を遂行するにはあらかじめどういったケースでエスカレーションすべきかが明確なルールとして定められていることが理想です。
◆関連用語
クレーム対応をしていると「上司に代われ」「責任者と話をさせろ」と言われることも多いです。しかし、すぐに上司に電話を代わるのは得策ではありません。上司は、それまでの対応の経緯を把握できていません。
また、今後を考えると、「あの会社は強く言えばすぐに責任者を呼び出せる」という印象を与えたくはありません。
「上司を出せ」という言葉は、製品やサービスに詳しい人と話をしたい、権限を持っている人と話をして問題を早く解決したいという要望でもあります。相手の要望をよく確認したうえで、「この件について検討して、あらためてこちらからお電話を差し上げます」と電話を切るのがよいでしょう。
かたくなに上司に電話をつなげないと拒否する姿勢をみせるのではなく、「ご要望は上司に伝えること」「上司は今すぐには電話を取り次げないこと」「検討するのに時間を要すること」などを説明して、ご理解いただくことが重要です。
もちろん、その後、上司や関係者に経緯を説明します。そして、その後の対応を上司に引き継ぐか、「上司と検討した結果、こうなった」と顧客に連絡する必要があります。
営業クレームの対応方法【自社に非がない場合】
クレームのなかには、こちらに非がない場合もあります。
こちらに非がない場合でも、顧客の意見はしっかりと聞ききます。そのうえで「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」「ご不便をおかけしまして申し訳ございません」と謝罪します。
無理な要望への対応
こちらに非がないとわかったにもかかわらず、顧客がクレームを繰り返したり、理不尽な要求をしたりすることがあります。このような場合は、毅然とした態度で自社に責任がないことを説明することが重要です。
ただし、伝え方には注意が必要です。「恐れ入りますが」「大変心苦しいのですが」などのクッション言葉を使いながら表現をやわらかくして伝えましょう。
それでもクレーム電話が続く場合
要求を断ったにも関わらずしつこくクレームの電話をしてくる場合などは、対応を拒否し、電話を切ることが大切です。
「先日もお話しいたしました通り、弊社に非はございません。弊社としては、顧客のご要望に対応できることはございません。これ以上、お話しできることはございませんので、電話を切らせていただきます」などと伝え、話を終えましょう。
カスタマーハラスメントとは?
悪質なクレームをカスタマーハラスメント、略してカスハラといいます。厚生労働省では、『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』を公開し、顧客からの迷惑行為防止対策を進めています。
カスタマーハラスメントから従業員を守るため、カスタマーハラスメント法案なるものの検討もされているようです。このような動きも見逃せませんね。
クレーム対応でやってはいけないこと
クレーム対応で誤った対応をすると、顧客が余計に不快な思いをされることになります。ここでは、クレーム対応でやってはいけない3つのことを紹介します。
相手を否定する
顧客を否定するとは、「本当ですか?」などと顧客の言い分を否定することです。顧客は否定されると、「私が嘘をついていると言うのか!」などと気分を害してしまう恐れがあります。「そうですね」「なるほど」「よくわかります」「おっしゃる通りです」など、肯定的な相づちを打ちながら、顧客の話を伺いましょう。
相手の話をさえぎる
まずは、顧客の話をさえぎらずに最後まで聞くことが大切です。顧客が話をしている途中に反論すると、顧客を興奮させることがあります。逆に顧客が伝えたいご不満をすべて吐き出すと、顧客が落ち着くこともあります。
相手をたらい回しにする
「担当する部署が違いますので、電話を回します」。このように顧客をたらい回しにする会社も少なくありません。顧客をたらい回しにしないようにしっかりとお話をお伺いし、折り返し担当部署から電話させることなどが望ましいでしょう。
営業クレームを減らす方法
ここまで電話営業がクレームになることについて書いてきました。
電話営業自体、突然電話がかかってきて顧客は仕事を中断することになるので、クレームになりやすいと考えられます。また、クレーム対応の仕方によっては、さらに相手の気分を害することもあるのです。
営業クレームを減らす方法はないのでしょうか。
まずは、基本的な対応マニュアルを作成しておくことが必要です。それは営業パーソンごとに電話営業やクレーム対応のクオリティを合わせないと、チーム全体の質も上げられないからです。
ただし、すべてのクレームをマニュアルで対応することはできません。顧客もマニュアル化された対応は望んでいないでしょう。しかし、対応の基準を作っておくことで、エスカレーションの条件を決めたり、クレーム発生の原因分析もできるようになります。
クレームの原因をひとつひとつ見直していくことで、クレームを減らすことはできるでしょう。
それでもクレームをゼロにすることは難しいです。クレームになったことを反省する必要はありますが、必要以上に落ち込むことはありません。対応事例を作るつもりでクレームを恐れず、業務に励んでいただきたいと思います。