アップセルとクロスセルは、顧客ひとりあたりの購入単価を高めてLTV(顧客生涯価値)を最大化するための戦略のことを指します。
似ている言葉ですが、意味と営業手法には明確な違いがあるのでしっかりと確認しておきましょう。アップセルとクロスセルの違いを理解できれば、より効果的な営業・マーケティング戦略の立案にも役立ちます。
アップセル・クロスセルの意味や重要視されている理由、成功事例などを詳しく解説していきます。
アップセルとは
アップセル とは?
アップセルとは、顧客の購入単価を向上させるための営業手法のひとつ。
既存取引のある顧客に対してアップグレードを提案することをいいます。
新規顧客獲得のコストをかえずに売上を増やすことができるため、LTV(顧客生涯価値)の向上には欠かせない戦略として知られています。
例えば、現行の機種からより高性能な上位機種を購入してもらうこと、スポット販売から生産請負契約を結ぶこと、オプションをつけることが「アップセル」にあたります。
反対に「ダウンセル」とは、通常よりも価格の低い商材、下位の商材を提案することで購入を促すことをいいます。
また、「クロスセル」とは顧客が購入を検討している商材とは別の商材も提案し、いっしょに購入してもらうことで顧客の購入単価を上げる営業手法のことをいいます。
◆関連用語
アップセル施策の例
アップセルの具体的な例としては、「無料版から有料版へのアップグレード」や「一般カードからゴールドカードへの移行」などが挙げられるでしょう。
クロスセルとは
クロスセル とは?
クロスセルとは、アップセルと同じく顧客の購入単価を向上させるための営業手法のひとつ。
既存取引のある顧客に対し、別の商材も提案していっしょに購入してもらうことで、取引の幅を広げていくという戦略です。
例えば、スマートフォンといっしょにケースや保護フィルムをセット販売したり、風邪薬といっしょに栄養ドリンクを販売することもクロス説といえます。
また、ECサイトのレコメンド機能もクロスセルを狙った戦略に基づいたものです。
「アップセル」と「クロスセル」の違いは、顧客の購入単価をあげる方法が異なる点にあります。
アップセルは上位の商材の購入、クロスセルは関連商材の購入で顧客単価の向上をめざすという違いがあります。
◆関連用語
クロスセル施策の例
クロスセルとは、商品やサービスの購入を検討している顧客に合わせて活用できる別の商品やオプションを提案する営業手法です。「よく一緒に購入されている商品の提案」や「セットで購入すると割引になるプランの紹介」などが該当します。
アップセルとクロスセルが重視される理由
アップセルとクロスセルの違いは「より高額な商品やサービスへの移行」か「追加商品の提案」です。どちらも旧来から使われてきた方法ですが、近年ではさらに重要度が増してきています。
サブスクリプションビジネスの浸透も、重視されている要因のひとつです。サブスクリプション型サービスは成約までのハードルを下げましたが、簡単に解約されるというリスクも抱えています。
BtoBビジネスにおいても、新規顧客の開拓だけではなく、既存顧客の定着と顧客単価の向上が求められています。
1人(1社)の顧客から生涯で得られる通算利益「LTV(ライフタイムバリュー)」の最大化も求められているため、成約率だけを追求するビジネスモデルは終焉を迎えつつあると言ってもいいでしょう。
アップセル・クロスセルのメリット
アップセル・クロスセルの最大のメリットは、LTV(ライフタイムバリュー)の最大化にあります。
BtoBビジネス、BtoCビジネスにおいて新規顧客の獲得競争が激化している現在においては、新規顧客開拓にコストをかけるよりも、既存顧客のLTVを最大化するほうが利益を最大化できます。
また、新規顧客を獲得するよりも、既存顧客と良好な関係を保ってアップセル・クロスセルをしたほうが営業効率が良いです。
さらにアップセル・クロスセルのためのコミュニケーション施策がブランドイメージの向上に繋がるケースもあります。逆に「ゴリ押し」感が出てしまうと顧客離れを招いてしまうので、戦略と手法はよく検討する必要があります。
アップセル・クロスセルを成功させるポイント
アップセル・クロスセルを成功させるポイントは、主に次の3つです。
- ロイヤリティが高い顧客に営業する
- 商品・サービスの価値を上げる
- 強引な営業は避ける
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.ロイヤリティが高い顧客に営業する
アップセル・クロスセル施策は、顧客に明確なニーズがないものを提案するため、ロイヤリティが低いユーザーに営業を行なうと悪い印象を与える恐れがあります。このような問題を避けるには、ユーザーを顧客ロイヤリティの高低で分類したうえで、提案するユーザー層を明確にすることが大切です。
顧客ロイヤルティを測る指標にNPS®(ネットプロモータースコア)というものがあり、顧客との関係のを定量的に表すことができます。
NPSとは
NPS®では、ある商品やサービスを「友人や同僚にすすめる可能性はどのくらいあるか?」という質問に対して、0から10の度合いで回答してもらい、「批判者」「中立者」「推奨者」の3つのカテゴリに分類します。
- 10~9点…推奨者(Promoter)
- 8~7点…中立者(Passive)
- 6~0点…批判者(Detractor)
例えば500人の回答者のうち、250人(50%)が「推奨者」、150人(30%)が「批判者」だった場合、50%-30%=20がNPSとなります。
推奨者が批判者よりも多ければNPSはプラスになり、批判者が推奨者よりも多ければマイナスになります。
NPSと顧客満足度の違い
この考え方は顧客満足度と似ていますが、NPSは業績との相関性が高いという特徴があります。
たとえば、一般的な顧客満足度調査で「満足」という回答をした顧客であっても、リピートや購入単価の向上につながるとは限りません。しかし、NPSは顧客ロイヤリティを可視化できるため、活用次第では企業の成長に大きな影響を与えます。
アンケートを送付するなどの手間はかかりますが、アップセルとクロスセルを成功に導く重要な要素なので、採用を検討する価値は十分にあるでしょう。
なお、顧客ロイヤリティの高低は「批判者」「中立者」「推奨者」の分類をそのまま使います。アップセルとクロスセルの成功確率を高めるなら、営業の対象を「推奨者」に限定するといいでしょう。
顧客満足(CS)の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
2.商品・サービスの価値を上げる
営業対象や手法がどんなに適切であったとしても、商品やサービスに魅力がなければ、アップグレードや追加商品の購入は期待できません。マーケティング戦略を熟考するのも大切ですが、成果が上がらない場合には、商品やサービスの価格も含めた見直しと改善をする必要もあるでしょう
3.強引な営業は避ける
顧客の信頼を最優先することも重要です。営業が強すぎると、押し売りのイメージを与えて顧客離れが加速するので注意しましょう。押し売りと感じたユーザーの信頼を回復するには時間がかかります。顧客の定着化を図るためにも、顧客中心の施策を展開していきましょう。
アップセルの成功事例
ここからは、アップセルの成功事例を2社ご紹介していきます。
アップセルの成功事例1:「Spotify」
Spotifyは端末を選ばず無料で数千万の音楽とポッドキャストが聴けるサブスクリプションサービスです。
無料版では広告のスキップ、音楽のダウンロード、好きな曲順での再生などの機能が利用できません。また、スマホ版では1時間あたり最大6回までしかスキップができません。スキップ回数の制限がかかると、有料版へのアップグレードを勧めるメッセージが表示されます。
音楽のシャッフルプレイはSpotifyの特徴ではありますが、有料版の方がより自由度が高くなることを実体験として理解できるので、アップセルへの誘導もスムーズです。
アップセルの成功事例2:「ヤクルトスワローズ」
球団の公式ファンクラブ「Swallows CREW」の会員には、ライト・キッズ・レギュラー・ゴールド・プラチナという5つのグレードがあります。
この中で、キッズ会員以上の特典として付与しているCREWユニフォームが顧客ロイヤリティの向上に大きな影響を与えています。
この結果を踏まえて、プラチナ会員以上から付与される記念品にコーチジャケットなどを加えた結果、プラチナ会員の獲得増につながっています。さらに、会員グレードに応じた特典の差別化も実施して、ゴールドとプラチナ会員の早期定員達成を実現しています。
クロスセルの成功事例
ここからは、クロスセルの成功事例を2社ご紹介していきます。
クロスセルの成功事例1:「Amazon」
Amazonでは、ユーザーが商品を購入した際に「よく一緒に購入されている商品」や「関連するスポンサー商品」といったメッセージを表示して、クロスセルの成果を高めています。おすすめされた商品を購入したことがあるという方も多いのではないでしょうか。
クロスセルの成功事例2:「マクドナルド」
対面型のクロスセルの代表例として挙げられる企業です。マクドナルドを利用した経験があれば、「ご一緒にポテトはいかがですか?」「セットによるとお得です」などと聞かれたことがあるはずです。方法としては単純ですが、顧客単価の最大化に貢献しているのは間違いないでしょう。
まとめ
アップセルとクロスセルという言葉だけ聞くと難しく感じるかもいれませんが、身近な店舗でも日常的に使われている営業手法です。
工夫次第では、既存顧客の定着強化を図りながら、顧客単価の最大化も狙えます。ただし、顧客視点でのビジネスを展開できなければ、逆効果になることもあるので注意が必要です。
今回ご紹介した成功のポイントや成功事例などを参考にして、顧客単価を高めるマーケティング戦略の立案などに役立ててみてください。
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