競合分析は、自社のビジネスを成功させる上で欠かせない活動です。競合他社の現状を把握し、自社の強み・弱みを明確にすることで、より効果的な戦略を立案することができます。
しかし過去に競合分析を行った経験がない方は、以下のように悩むのではないでしょうか。
- 何から始めればいいかわからない
- 正しく競合分析ができているか不安
- 競合分析のお手本があれば知りたい
そこでこの記事では、競合分析の経験がない方に向けて、基本的なフレームワーク(分析手法)である3C分析、4P分析、5フォース分析、バリューチェーン分析、SWOT分析についてわかりやすく解説します。
※この記事は2023年3月6日に公開したものを加筆修正しています
競合分析とは?
競合分析とは、自社のサービスや商品とライバルになり得る会社をさまざまな観点から分析して、差別化を図るための作業です。
分析する項目は、競合分析の目的や取り扱うサービスや商品によって異なります。
競合分析の目的
競合分析を行う目的は、他社との差別化ポイントを見つけ、価格競争を避けるためです。
自社の強み・弱みの特定: 自社の優位性と改善すべき点を明確にする。
競合の優位性と弱点の把握: 競合の強みを参考にしながら、自社の差別化を図る。
市場の動向把握: 市場全体のトレンドや顧客ニーズの変化を捉える。
新たなビジネスチャンスの発見: 競合の隙間や未開拓の市場を見つける。
競合分析が重要な理由
例えば競合分析を行わず、トップシェアを獲得している他社商品と類似している商品を開発したとしましょう。開発された商品は特に強みもないため、顧客の多くは価格が一緒であれば、すでに認知している他社商品を購入するでしょう。
上記の状況で他社製品に勝つためには、値段を下げるしかありません。ただし価格競争は、薄利多売の原因となり、リピーターができにくいです。そのため、競合分析を行って他社製品と差別化ポイントを見つけるのが重要です。
市場分析と競合分析の違いとは?
競合分析とよく似ている「市場分析」とは、市場の動向や顧客のニーズを分析することです。市場分析は、主に以下のような手段で行われます。
- アンケート
- 電話調査
- 顧客へのインタビュー
市場分析はマーケット全体の規模感や流れを把握するのが目的です。一方で競合分析は、他社のサービスや製品と自社商品の違いを分析します。
競合分析の基本的なやり方
競合分析のやり方は、以下4つの手順で行います。
- 競合分析の目的を決める
- 競合他社を決定する
- 仮説を立て分析項目を決定する
- 競合分析を行う
1.競合分析の目的を決める
初めに競合分析の目的を決めましょう。目的を定めないと、分析すべき内容や会社を設定できず、競合分析がいつまでも終わらないからです。
競合分析を行う目的には、下記が挙げられます。
- 新商品の開発
- 既存商品の改良
- マーケティング手法の変更
2.競合他社を決定する
競合分析の目的が定まったら、どの会社を「競合」とするか決定しましょう。分析対象が分からないと、効率的な競合分析はできません。
仮に目に付いた会社すべてを競合にすると、費用や時間がかかり非常に非効率です。競合とする対象は、下記の会社をおすすめします。
- 顧客のペルソナが似ている会社
- 業界トップシェアの会社
- 規模感(資本金・従業員数・売上高など)が似ている会社
ただし同じサービス・商品を提供している会社だけが競合になるとは限りません。
オフィスチェアを例に考えてみましょう。一般的に考えると競合は、同じくオフィスチェアを販売している会社です。しかし、オフィスチェアを「従業員の健康を促進させる商品やサービス」と定義すると、フィットネスジムが競合となる可能性もあります。
競合他社を決める際は、顧客が何を目的にお金を支払うのかという視点を持ちましょう。
3.仮説を立て分析項目を決定する
競合分析を開始する前に仮説を立てましょう。
競合分析には費用と時間がかかります。事前に仮説を立て、なぜ他社商品は強いのか、自社商品が競合他社に劣る理由を考えておくと効率的な競合分析が可能です。
仮説の例としては下記が挙げられます。
- シェアNo.1企業の商品は、顧客認知度が高く定価で売れているため利益率が高い
- 競合他社が低価格を実現できているのは、協力業者と密な関係を築いて仕入れコスト避けているから
次に仮説をもとにして、競合分析の分析項目を決めましょう。事前に立てた仮説と比較項目をもとに競合分析を行います。分析項目は、事前に立てた仮説を立証できるものにします。
例えば「他社製品は、顧客度の認知度が高いから売れている」と仮説を立てたとしましょう。仮説を立証するには、「商品の認知度」や「商品を購入した理由」が分析項目となります。
4.競合分析を行う
仮説を立て分析項目が決まったら、競合分析を行いましょう。競合分析の手法として一般的なものは下記の通りです。
- アンケートを行う
- ペルソナにインタビューを実施する
- 他社商品を購入して使用する
- 他社商品の販促資料を入手する
上記の手法を実施して、仮説が正しいか分析していきます。競合分析の結果かつ通りの結果を得られなければ、新しい仮説を立て、再度競合分析を行いましょう。
競合分析のフレームワーク5選
競合分析でよく使われているフレームワークは以下の5つです。競合分析のフレームワークは、現状分析をしたいのか、マーケティング戦略を立案したいのか、用途によって使い分けることで効力を発揮します。
- 3C分析
- 4P分析
- 5F分析
- バリューチェーン分析
- SWOT分析
3C分析
3C分析とは以下3つの要素に着目したフレームワークです。
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
3C分析は「市場・顧客→競合→自社」の順で分析を行います。
はじめに市場規模や成長性、考えられるリスクを把握しましょう。次に競合企業の戦略や特徴を分析しましょう。競合企業の分析により、参考にすべき部分や差別化ポイントが見つけられます。
最後に市場・顧客、競合企業の結果をもとに自社の戦略を考えます。また3C分析は、後述するフレームワークと合わせて活用すると有効です。
4P分析
4P分析とは、サービスや商品を構成する下記の要素に着目したフレームワークです。4P分析は3C分析のCompetitor(競合)とCompany(自社)を分析する際に有効です。
ただし4P分析は、売り手(自社)の視点に立った分析のため、3C分析やSWOT分析と組み合わせ、顧客や市場環境も考慮して戦略を決める必要があります。
Product(商品) | ユーザーにどのようなメリットを与えられるサービス・商品なのか |
Price(価格) | サービス・商品の価格はいくらか |
Place(流通) | どのような商流か、どのように提供されるか |
Promotion(プロモーション・販売促進) | 商品の販促方法はどうするのか |
5フォース分析
5F分析(ファイブフォース)とは、自社を取り巻く下記5つの脅威に着目したフレームワークです。新商品開発や業界の新規参入時に有効なフレームワークです。
- 競合他社の脅威
- 新規参入の脅威
- 買い手(顧客)の交渉力
- 売り手(仕入れ先)の交渉力
- 代替品の脅威
上記5つの脅威を分析して、自社の収益性が悪化する要因を見つけ出します。競合他社が強ければ、サービスや製品は売りにくく収益性が悪化悪化します。
新規参入のしやすい業界であれば、常に厳しい競争に晒され、利益率を高めるのは難しいです。買い手と売り手の交渉力が高ければ、自社にとって有利な価格で取引を進めにくいです。
代替品が出てくると今ある商品やサービスは全く売れなくなるかもしれません。5つの脅威をすべて分析すると、収益性を悪化させる要因がわかります。
バリューチェーン分析
バリューチェーンは日本語で「価値連鎖」と訳します。原材料の調達から顧客へサービスや商品を届けるまでに生み出される価値です。
各活動ごとにどれだけの価値を生み出しているのかを分析します。バリューチェーン分析は、自社だけでなく競合他社の活動に対しても行うと、自社のサービスや商品が持つ強みや弱みの分析が可能です。
SWOT分析
SWOT(スウォット)分析は、以下4単語の頭文字を取ったフレームワークです。
- S:Strengths(強み)
- W:Weaknesses(弱み)
- O:Opportunities(機会)
- T:Threats(脅威)
SWOT(スウォット)分析では、4つの要素を内部環境と外部環境に分けて分析します。
内部環境では、自社の強みと弱みを明らかにします。外部要因では、自社の活動によって変えられない要素を明らかにします。
市場の成長性や景気だけでなく、競合他社の強み・弱みも外部要因です。SWOT分析を行うと、自社が取り巻かれる内部環境・外部環境を整理できるため、他の分析手法を実施する前段階として利用するのがおすすめです。
生成AIも積極的に活用を
また、有名企業であればChat GPTやGemini(旧Bard)などの生成AIが役に立つこともあります。
例えばBardに「任天堂を3C分析してください」と質問すると以下のような解答が返ってきました。
また、「任天堂をSWOT分析してください」という質問には以下の答えが返ってきました。
詳細については確認する必要がありますが、かなり役に立つのではないでしょうか。正しい答えが得られるのは有名企業、上場企業に限られてしまうようですが、生成AIも活用してみましょう。
まとめ
市場は常に変化するため、定期的に競合分析を行うことが重要です。また、製品・サービスだけでなく、マーケティング戦略、企業文化など、多角的な視点で分析を行うことも大切です。
定量的なデータはもちろん、顧客の声などの定性的な情報も合わせて分析することで、より深い洞察を得ることができます。
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