目標の設定が曖昧だったり、現実的ではなかったりすると社員の士気が下がってしまうことがあります。
そこでおすすめなのがSMARTの法則。SMARTの法則を使えば、社員が日々何をすべきかを自ら考え、目標達成にモチベーションを上げて業務にはげむことも可能になります。
目標設定のフレームワークとして覚えておきたい「SMART(スマート)の法則」について、活用方法と具体例をわかりやすくご紹介します。
そもそも目標設定とは?
目標を決めるときは、最初に会社全体の目標を決定します。企業の最終的なゴールを設定することで目標達成に向けて一致団結し、社員のモチベーションを向上させ、全社の目標達成に向けて業務を遂行します。
次に部門ごとの目標を設定し、最終的に社員個人の目標設定へとブレイクダウンしていきます。したがって、社員個人の目標は、全社目標を達成するために必要な内容を逆算して設定するようになります。
また、上司やリーダーはメンバーの目標管理を行い、主体的な行動を促す役割を担います。
目標設定に役立つ「SMARTの法則」
SMARTの法則とは、5つの要素に基づいた目標の立て方を意味します。次にあげる5項目の頭文字を取ったものです。
- Specific…具体的であるか
- Measurable…測定可能であるか
- Achievable…達成可能であるか
- Relevant…組織目標と関連性があるか
- Time-bound…期限が定められてるか
SMARTの法則は、ジョージ・T・ドランの著書『There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives』において、初めて提唱されました。
会社や社員が成長していくためには、将来の方向性を指し示す必要があります。そのためには最初に明確な目標を立てることが重要で、SMARTは目標を立てるための手法として注目されています。
上記の5つの要素に沿って具体的なゴールを明確にすることで、無駄のない行動ができるようになり、行動した結果がふさわしいかどうかの判断がしやすくなります。
SMARTの5つの要素について、それぞれ見ていきましょう。
1.Specific:具体的であるか
目標の内容は、具体的な表現でなくてはなりません。なぜなら、目標の表現が曖昧では達成に向けた行動も曖昧になってしまうからです。
例えば、「5冊の本を読む」と目標を立てたとします。しかし、これでは明確な目標とはいえません。したがってここでは、5W1Hを使用するようにします。
「Who:誰が、What:何を、When:いつまでに、Where:どこで、How:どのように」に当てはめることで目標が明確になります。
先ほどの「5冊の本を読む」という目標を当てはめると、「私は、マネジメントの本を、9月末までに、電車で、朝晩の通勤時に5冊読む」となります。
このように、いつまでに何をどのようにして本を読むかまで落とし込むと、行動が明確になります。
2.Measurable:測定可能であるか
SMARTの「M」は、目標の測定が可能であるかということです。言い換えれば、目標を数値化できるようにするという意味です。
営業職のように、目標の数値化がしやすい部署もあれば、人事や管理部門などの数値化が難しい業務もあります。そのような場合は、日々行っている細かい業務について、どのような作業を何回するかなど、数値を当てはめることで目標を数値化していきます。
例えば、「1月は採用面談を○人担当する」などや、「この月は計算ミスを○○%以下に抑える」など、実施する作業に対して数値を当てはめることで、管理部門でも目標を数値化できるのです。
3.Attainable:達成可能であるか
SMARTの「A」は、達成が可能な目標を設定するという意味です。達成が不可能な現実的ではない目標を設定してしまうと、無理だと感じてしまうことから、最初からモチベーションが下がってしまいます。
また、途中まではがんばって目標達成に向けて行動しても、途中で達成が不可能と感じた時点で、急激にモチベーションが下がってしまいます。
一方で、非常に簡単に成し遂げられる目標を設定しても、これも意味がありません。それまでの実績などを鑑み、ギリギリ達成が可能な程よいラインを設定するようにしましょう。
4.Relevant:組織目標と関連性があるか
SMARTの「R」は、組織の目標と関連性があるという意味です。社員の個人目標が、部門や会社全体の目標と関連性があるかどうかをチェックします。個人目標が組織の方向性と大きく異なる場合は目標の設定をしなおす必要があるでしょう。
5.Time:期限が定められているか
SMARTの「T」は、目標には期限が設定されているかを指しています。なぜ期限が重要かというと、期限を設定することでモチベーションにも左右しますが、難易度も大きく変動するからです。
同じ業務を実施するにも、短期間でミスの無いアウトプットをするのと、時間をかけてじっくり実施するのとでは難易度が変わってきます。
また、なるべく早くなどの曖昧な表現は避け、「上期終了時までに」「○○月末までに」などのように、明確な期限を定めることが重要です。
SMARTの法則の活用事例
それでは、SMARTの法則を活用した事例をここでご紹介します。
営業職の場合
営業職の目標設定は、数値化しやすいのでSMARTの法則は活用しなくても良いと思われる人もいますが、決してそんなことはありません。
例えば、「今年度は新規開拓だけでなく既存顧客も定期訪問し、月間1000万円の売上を達成する」と目標を立てたとします。しかしこれでは、営業担当が日々の活動で何をするかが明確になっていません。
それでは、SMARTの法則に当てはめてみましょう。
S(具体性) | 200万円の案件を5契約で月間売上1000万円を達成する |
M(測定可能) | 1週間で15件の顧客へ訪問し、その内10件を案件化し5件を受注する |
A(達成可能) | 前月は週平均14件訪問、9件の商談の内4件を受注しており実現可能 |
R(関連性) | 営業メンバーが10人の営業1部の売上目標が1億円であり関連性あり |
T(期限) | 今月の売り上げ締切日である31日までに実現する |
このように、SMARTの法則へ当てはめることで、1日に営業担当がするべきことが明確になり、数値目標を設定することでその数値を追いかけることになります。
販売職の場合
メンバー2人で運営する店舗の例として、月間店舗売上目標400万円を達成するため、1人あたり200万円の売上目標の設定を、SMARTの法則へ当てはめてみます。
S(具体性) | 客単価が1万円、1日平均10人x20日販売。月間200万円を達成する |
M(測定可能) | 1日25人に声をかけ、その内10人に購入してもらう |
A(達成可能) | 前月は1日平均22人へ声がけし1日平均9人に販売しており実現可能 |
R(関連性) | メンバーが2人の店舗の売上合計目標が400万円であり関連性あり |
T(期限) | 今月の売り上げ締切日である31日までに実現する |
以上のように、店舗全体の目標値に対して、メンバーそれぞれの月間の目標売上を設定します。
さらに1日に何人に声をかけるべきかを明確にすることで、具体的に1日何人へ声をかけなければいけないか、詳細な行動目標が確立します。
目標設定から達成のためにすべきこと
目標の設定から達成までにすることは、けっこう単純です。SMARTの法則で目標設定するメリットは、目標設定はもちろん、達成のために必要な行動も明文化できることにあります。
日々の行動をスケジュールに組み込む
例えば販売員が、「1日に25人に声をかける」ことが目的だとしたら、「午前中に15人に声をかけ、午後は10人に声をかける」など日々の予定に行動を落とし込みます。
目標達成につながらないことをやめる
まずは、先月何をしたかという行動の記録をつけます。あとで振り返ったときに、この行動は目標達成のために必要な行動であったのかを精査し、必要のない行動であったら次月からはやめるようにします。
定期的に目標を見直す
「Attainable:達成可能であるか」の項目でも解説したように、現実的ではない目標を設定してしまっては、社員のモチベーションは下がってしまいます。したがって、目標値と結果に大きな開きがある場合は、定期的に目標を見直す必要があります。
まとめ
企業や部門の目標を達成するためには、明確な個人目標を設定する必要があります。
例えば、KPIを設定しようとするとき、SMARTの法則を意識することで、より具体的なアクションに落とし込むことができます。
また、SMARTの法則に当てはめて目標を設定することで、従業員が日々どんな行動をすべきかが具体的に見えてきます。ただなんとなく目標を追いかけるのではなく、SMARTの法則にあてはめて、効率的な行動をするようにしましょう。
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