自社の事業の分析をするとき、「PPM分析」がよく用いられます。
製品、サービスを市場成長率と市場占有率の2軸を使って4つのポジションに分類することで、自社や競合他社がどのような立ち位置にあるのかを可視化できるというものです。
今回はExcelを使ってPPM分析を分析をする方法について、わかりやすく解説していきます。
PPM分析とは?
PPM分析とは、Product Portfolio Management(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の略で、複数の事業を経営する企業が、どの事業にどの程度の投資を行うかを分析するためのフレームワークです。
「市場成長率」と「市場占有率」の2軸で4つのポジションに分類し、経営資源の配分を分析します。PPM分析の「4つのカテゴリー」とは、以下の通りです。
・花形(Star) ・金のなる木(Cash Cow) ・問題児(Problem Child) ・負け犬(Dog) |
4つのポジションの意味
ポジション | 市場成長率 | 市場占有率 |
花形 | 高 | 高 |
金のなる木 | 低 | 高 |
問題児 | 高 | 低 |
負け犬 | 低 | 低 |
まずは、「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の意味を知っておきましょう。
花形
市場成長率も市場占有率も高い優良事業。市場規模が拡大しているため、経営資源の投資を継続、もしくは拡大することで大きな成長が見込まれる一方で、市場競争が激化している可能性もあります。
金のなる木
市場シェアが高いが、市場成長率は低い安定事業。顧客基盤が大きく、収益性が高いのが強みですが、市場が成長していないため、売上増加の余地が少ないのが弱みです。
問題児
市場成長率は高いが、市場シェアが低いため投資が必要な事業。市場が成長しているため、売上増加のポテンシャルは高いものの、競争が激しく、収益性が低い一面があります。
負け犬
市場成長率もシェアも低いため、撤退を検討すべき事業。市場が成長していないため、売上増加の見込みがないと判断できます。
▼関連記事はこちら
PPM分析の市場成長率と市場占有率の計算方法
市場成長率と市場占有率を算出することで、自社の事業や製品、サービスが市場の中でどのような立ち位置にあるのかを把握することができます。それぞれの計算方法を詳しく説明します。
市場成長率の計算方法
市場成長率は、ある期間における市場規模の変化率を表す指標です。一般的に、前年比で算出されます。
【計算式】 市場成長率 = (本年度の市場規模-前年度の市場規模)÷ 前年度の市場規模 × 100 |
例:本年度の市場規模が100億円、前年度の市場規模が80億円の場合、市場成長率は以下の通りとなります。
市場成長率 = (100億円 – 80億円) ÷ 80億円 × 100 = 25% |
注意点
市場規模は、調査機関や統計データなどによって異なる場合があります。分析に使用するデータソースを統一することが重要です。
市場占有率の計算方法
市場占有率は、自社の売上高が市場全体の売上高に占める割合、つまりシェアを表す指標です。また、競合他社(売上1位企業)の市場占有率と比較することで、自社の立ち位置がわかります。
【計算式】市場占有率 = 自社の売上高 ÷ 市場規模 × 100 |
例:自社の売上高が20億円、市場規模が100億円の場合、市場占有率は以下の通りとなります。
市場占有率 = 20億円 ÷ 100億円 × 100 = 20% |
さらに、相対的市場占有率を求める計算式は以下の通りです。
【計算式】 相対的市場占有率 =自社の市場占有率 ÷ 1位企業の市場占有率 |
例:自社の市場占有率が20%、1位企業の市場占有率が50%の場合、相対的市場占有率は以下の通りとなります。
相対的市場占有率 = 20% ÷ 50% × 100 = 40% |
注意点
自社の売上高は、自社の会計情報などから算出します。上場企業であれば、EDINETで公開されている有価証券報告書で調べることができます。
また、前述の通り、市場規模は調査機関や統計データなどによって異なる場合があります。
3.4つのポジションの分類方法
自社のそれぞれの事業について、y軸を市場成長率、x軸を相対的市場占有率としてプロットしていきます。そのプロットした点の上に売り上げの大きさに比例したバブル円を描きます。
ExcelでPPM分析をする方法
PPM分析点のプロットやバブル円の大きさは数値を見ながらざっくりと作成してもかまいませんが、更新や共有のしやすさを考えるとExcelで作ってみるのもおすすめです。
ここではExcelの標準機能を活用した、簡単4ステップでPPM分析を行う方法をご紹介します。
1.自社の売上データを用意する
自社の事業の売上と市場占有率、さらに市場成長率を調査してExcelの表に入力していきます。
例えば、ユニクロを運営する、株式会社ファーストリテイリングをPPM分析する場合、売上データは有価証券報告書で確認します。市場規模については、矢野経済研究所のプレスリリースなどを参考にまとめていきます。有価証券報告書に記載されている場合もあります。
事業 | 市場成長率 | 市場占有率 | 売上(百万円) |
国内アパレル事業 | -5.9% | 20.0% | 810,0361 |
海外アパレル事業 | 10.7% | 14.3% | 1,200,765 |
低価格アパレル事業 | 9.0% | 3% | 258,055 |
ブランド事業 | -3% | 1.5% | 123,224 |
2.バブルチャートを作成する
まずはExcel上の数値データ部分を選択して、「挿入」⇒「バブル」を選択します。バブルチャートが瞬時に完成します。
3.ラベルを整える
縦軸や横軸のラベルの位置は見やすいように、左端や下端に変更します。
バブルに事業名のラベルを付けるには、グラフ横の「+」をクリックして「データラベル」⇒「その他のオプション」⇒「セルの値」にチェックを入れて、ラベル名のセルを選択します。
こんな感じでバブルチャートが完成しました。
4.4つのポジションをあてはめてみる
さらに、PPM分析の「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」をあてはめると完成です。ちなみに、Googleスプレッドシートでも同じようにバブルチャートが作れます。(Googleスプレッドシートのほうが直感的に操作できるので使いやすいかもしれません)
PPM分析の活用方法
PPM分析は、自社の事業を客観的に評価するために有効な手法です。具体的な活用方法は以下の通りです。
1. 自社の事業の将来性を判断する
市場成長率と市場占有率を軸に、事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4つに分類することで、将来性のある事業と投資を控えるべき事業を判断することができます。
2. 投資配分を検討する
将来性のある「花形」と「金のなる木」には積極的に投資し、「問題児」と「負け犬」には投資を控えることで、経営資源の有効活用を図ることができます。
3. 事業戦略を策定する
「各事業の将来性」と「投資配分」を踏まえ、新規事業の立ち上げ、既存事業の撤退、事業の買収・売却など、具体的な事業戦略を策定することができます。
PPM分析は、定性的な分析と定量的な分析を組み合わせた客観的な評価手法なので、説得力のある事業戦略を立案することができます。
4. 競合他社の分析
自社事業の相対的市場占有率と市場成長率を、競合他社と比較することで、自社の競争力を把握することができます。
競合他社との比較分析を行うことで、自社の強みと弱みを明確にし、差別化戦略を策定することもできます。
▼関連記事はこちら
まとめ
アパレルA社の事例では、売上の大きな「国内アパレル事業」は市場占有率が低いため、積極的な投資が必要なことがわかります。
「海外アパレル事業」は利益を出しやすい状況ですが、競争が激しくなると投資が必要になります。また、「低価格アパレル事業」は市場占有率が高いため、安定的な収益が期待できるポジションです。
PPM分析には正確なデータ収集が必要になるため、市場の動きには注目しておきましょう。複雑そうに見える有価証券報告書も、目的を持って読んでみるとデータの宝庫です。ぜひマーケティング分析に活用してみましょう。
【PR】新規開拓に使える営業リストが無料ダウンロードできる「Akalaリスト」
Akalaリストとは、絞り込み条件を選ぶだけで、ニーズにマッチした企業を抽出できる「営業リスト作成ツール」です。
絞り込み条件を選ぶだけで、最短30秒で営業リストが作成でき、さくっとダウンロード可能。CSVファイル形式なのでエクセルやGoogleスプレッドシートで開け、そのままSFAやCRMにアップロードすることもできます。
もちろん、営業リストの鮮度と精度にもこだわっています。
各企業のIR情報や官公庁の統計資料などの一般公開されている情報はもちろん、日本国内の500万を超える法人データを収集し、高い精度で連絡先のクレンジング・名寄せ処理を行っています。
テレアポ・FAXDM・郵送DM・フォーム営業がすぐにはじめられるAkalaリスト。ムダのない営業活動をサポートします。
いまなら毎月300件無料ダウンロードできる!
いまなら会員登録するだけで毎月300件の営業リストが無料ダウンロードできます!
有料プランへの切り替え手続きをしない限り、料金を請求することはございません。無料プランは電話番号もクレジットカードの登録も不要なのでご安心ください。
▼詳しくはこちらから