企業で働く人にとってパワハラは対策すべき問題です。
マネージャーやリーダー職にとっては、「指導のつもりだったのにパワハラだと訴えられた」「パワハラになるから注意ができない」などと不安や難しさを感じてしまう問題なのではないでしょうか?
今回はパワハラと指導の違いについて明らかにするために、パワハラの定義とパワハラにならない事例から、線引きをはっきりさせてみたいと思います。パワハラにならない指導方法について悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
パワハラの定義
パワハラとはパワーハラスメントの略で、職務上の地位や立場を利用し、相手に苦痛を与える行為のことをいいます。
厚生労働省の調査では、パワハラを受けた経験があると回答した従業員は31.4%にも上っています。パワハラはとても身近な問題だといえます。
厚生労働省では以下のようにパワーハラスメントを定義づけています。
職場において行われる
① 優越的な関係を背景とした言動であって
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③ 労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
ここでいう「職場」とは、業務を遂行する場所すべてを指します。出張先や取引先との打ち合わせの場も職場に含まれます。勤務時間外の懇親会や社員寮も職場に該当することがあります。
同僚同士でもパワハラになる
パワハラは上司が部下に行うというイメージがありますが、以下のようなケースでもパワハラが発生します。
- 先輩から後輩
- 正社員から非正規雇用者
- 部下から上司(逆パワハラ)
- 同僚同士
「優越的な関係を背景とした言動」とは、同僚や部下からの集団によって行われるもので、抵抗や拒絶が難しいものもパワハラに該当します。
また同僚同士でも、業務上の必要性が明らかにない言動や態度もパワハラです。人格を否定する言動、無視、嫌がらせはパワハラだと判断できます。
パワハラ防止法は中小企業も対象に
2022年4月1日から「パワハラ防止法」が中小企業にも施行されています。大企業は2020年6月1日からすでに施行されています。
パワハラ防止法とは、事業主に対してパワハラ対策を義務化するというものです。従業員への「パワハラ研修」も義務化されたのでご存じの方も多いはずです。
これまで曖昧だったパワハラの基準について法律で定められたことによって、企業側もパワハラ対策を強化することが求められています。
パワハラの6類型とパワハラの具体例
前述の通り、「労働者の就業環境が害される言動」はパワハラだといえます。
身体的または精神的に苦痛を感じる環境は、適切な就業環境とはいえません。パワハラによって能力が発揮できないばかりか、心身に不調をきたすことも考えられます。
どんな言動がパワハラになるのか具体例を見ていきましょう。厚生労働省がまとめている「パワハラ6類型」をもとに考えてみます。
①身体的な攻撃
たたく、殴る、蹴る、物を投げつけるなどの暴行はいけません。
②精神的な攻撃
人格を否定するような言動もパワハラです。長時間に渡って叱責を続ける、ほかの従業員の前で威圧的に叱責する、能力を否定する発言は精神的な攻撃にあたります。また、性的嗜好や性自認など、人格を否定する言動もNGです。
③人間関係からの切り離し
特定の従業員を別室に隔離する、無視をする、歓送迎会に出席させないなど、職場で孤立させる行為はパワハラです。
④過大な要求
業務上、明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制するのはパワハラです。例えば、新人に仕事のやり方も教えずに、他の従業員の仕事も押しつけるといった行為はパワハラに該当します。
⑤過小な要求
反対に能力や経験とかけ離れた仕事を命じることもパワハラに該当します。例えば事務職なのに草むしりだけをさせる、嫌がらせのために仕事を与えないといった行為はパワハラです。
⑥個の侵害
上司とはいえ、私的なことに過度に立ち入ってはいけません。思想・信条を理由に職場の内外で監視したり、家族や交際相手について執拗に問う行為もパワハラです。
パワハラと指導の境界線
教育的な指導をしているつもりでも、従業員に「パワハラ」と受け止められることがあります。
パワハラの定義は上記の通りですが、いったいどこからがパワハラで、どこまでが指導なのか線引きが曖昧です。「これってパワハラ?」と感じるグレーゾーンの事例も多いですね……。
トラブルを避けるためにも、パワハラと指導の境界線、パワハラと指導がどう違うのかについて知っておいたほうがいいでしょう。
業務上で必要な指導とは
「指導」とは、目的に向かって教え導くことを意味します。相手の成長を願って注意する、フィードバックをすることが大前提になります。
必要な報告や連絡をしなかった、仕事の期日を守らなかった、遅刻ばかりで勤務態度が悪い、顧客に失礼な態度をとったときなど、いろいろと指導をするケースが考えられます。
厚生労働省の資料にも「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません」とあるように、適正な業務指示や指導であればパワハラにならないといえます。
例えば……
- 短所を自覚させて、長所を伸ばす。
- 注意の後はフォローをし、ミスを無くす対策を講じる
- 指導の必要性を明確に伝える
という事例は「指導」にあたると言えます。
事業を拡大する、目標を達成するためにも「指導」は必要です。パワハラを恐れるあまり、適切な指導をしない、注意しないのでは会社のためになっているとはいえません。その点も注意したいですね。
指導のつもりでも伝え方によってはパワハラになる
たとえば、従業員が2度同じ失敗をしたときに「何度同じ失敗をしたら気が済むんだ!クビにされたくなかったら死ぬ気で改善しろ!昼飯を食う暇なんかないぞ!」などと言って大声で怒鳴りつけるのはパワハラです。
「教育的指導」のつもりでも、それが暴言や侮辱であったり身体的な暴行をともなっていると、パワハラの境界線を越えてしまっているといえます。たとえ指導のつもりでも、伝え方によってはパワハラになることがあるので、感情的な物言いや失言には注意が必要です。
パワハラの具体例をご紹介します。
・業務と無関係な部分で人格を否定するのはパワハラ
「お前は暗いからダメだ」「最低なやつ」「だから、高卒は嫌なんだ」
・雇用についての不安を与えるのはパワハラ
「これ以上改善しないならクビ」「ここは、お前に向いていない」「転職先を探しておけよ」
・仕事をさせない、干すこともパワハラ
「ミスをされると迷惑だから資料整理でもしてろ」「何もできないんだからトイレ掃除してろ」「罰として1週間草むしりだ」
・プライベートな質問をする
交際相手について執拗に質問したり、プライベートなことに過度に立ち入ってしまうのはパワハラです。しかし、業務上の配慮のために家族の状況を確認するのはOKです。
・あだ名で呼ぶ
相手を侮辱するようなあだ名で呼ぶことはパワハラです。ただし、「○○ちゃん」などの呼び方が浸透している場合はパワハラにならないこともあるので、ハラスメントに当たるかどうかはグレーゾーンです。
パワハラにならない叱り方とは?
パワハラと受け取られずに指導するには、どうすればいいのでしょうか?
パワハラと指導の違いを明確に知っておく
まずは、パワハラと指導の違いを正しく知っておくことが大切です。人事院がまとめた『パワーハラスメント防止ハンドブック』に掲載の表がわかりやすいので、ぜひ参考にしてください。
指導方法を見直す
表の通り、目的なく感情的に叱責する行為はパワハラ、相手の成長を考えた行動は指導だと判断できます。パワハラと指導の違いは感情的かどうかという点もポイントになります。
なのでアンガーマネジメントはもちろん、指導するスキルをしっかりと身に着けることで、パワハラだと受け取られることは少なくなるでしょう。パワハラと指導の違いの表を参考に、指導方法について見直したいポイントを整理してみます。
叱る目的を考える
「叱る」という行為はパワハラと受け取られがちです。感情にまかせて叱るだけではパワハラです。叱る前に、「改善のため」「成長してほしい」という目的を忘れなければ、威圧的、攻撃的な態度にはならないでしょう。
指導の理由を明確に伝える
指導の理由を相手に伝え、わかりやすく説明することで、従業員側も必要な指導だと理解できるでしょう。「将来、仕事をまかせたいから指導している」「まだ理解が足りていないところがあるからフィードバックをする」など、相手側に受け入れ態勢を整えてもらうようにしましょう。
改善方法も指導する
否定するばかりではパワハラになってしまいます。必ず、改善方法もあわせて指導するようにしましょう。
基本的なコミュニケーションのルールを見直す
失言に注意して、モラルに反する言動をしないことは大前提です。また、相手の話を聞かずに話を被せたり、大勢の前で叱責するなどの行動も精神的な攻撃にあたります。
アンガーマネジメントを身につける
怒りにまかせて怒鳴り散らすのではなく、ゆっくり6秒数えて深呼吸してみましょう。
相手の理解力に合わせる
専門用語や抽象的な言い方は威圧感を与えてしまいます。相手の理解度に合わせて指導をすることはもちろん、何に対して注意をしているのかも明確にします。
ただ不機嫌に振る舞うだけでは相手も改善のしようがありません。「フキハラ」という新しい言葉も出てきているので、注意しましょう。
ハラスメントの裁判例と他社事例
パワハラは、パワハラをした人だけでなく会社の責任になることがあります。厚生労働省のWebサイト「あかるい職場応援団」で詳細な事例を見ることができます。
一連の行為が、労働者を孤立させ退職させるための”嫌がらせ”と判断され、代表取締役個人及び会社の責任が認められた事案
労働者に対して会社が課した就業規則の書き写し等の教育訓練が、裁量権を逸脱、濫用した違法なものであるとして、損害賠償請求が認められた事案
また、パワハラにならなかった事例も掲載されています。
パワハラ対策の他社事例やパワハラ研修動画も充実しているので、ぜひ参考にしてみてください。以下のようなポスターやイラストも「ハラスメント関係資料ダウンロード」のページで無料で入手できます。
パワハラ6類型のイラストカード
パワハラ対策ポスター
まとめ
大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月よりパワハラ防止法が施行されています。
パワハラと指導の境界線は「パワハラ防止法」の施行によって、さらに明確になっています。パワハラだと受け止められることがないよう、パワハラの定義、パワハラと指導の違いを理解しておくことが大切です。
ただし、パワハラだと言われることを恐れるあまり、注意しない、指導しないというのも問題です。従業員の成長を促すためにも、適切な指導方法を身につけておきましょう。
特にインサイドセールスの現場ではKPIという数値目標に追われることもあるでしょう。目標達成のためには従業員の成長は欠かせません。怒る、叱るという行動よりも、どうやったら改善できるかといったマネジメントに重きを置いた働き方に注目が集まるでしょう。
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