法人営業先から過剰な要求をされたり暴言を吐かれたりなど、カスタマーハラスメント(カスハラ)を受けたときは、どのように対応すべきなのでしょうか?
営業担当者は取引先との関係性を壊したくないという気持ちで過度に我慢してしまいがちですが、心身に支障をきたすため冷静に対応するようにしましょう。
今回はカスハラの対応方法について解説します。企業が導入すべきカスハラ予防策もご紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
カスハラとは?
カスハラとはカスタマーハラスメントの略称で、顧客や取引先からの常識を逸脱した迷惑行為 を指します。
サービス提供者に対する暴言や過剰な要求、根拠のないクレームを繰り返す行為などが該当します。このような迷惑行為は、サービス提供者(従業員)の心身を酷く害する恐れがあるため無視できない問題です。
厚生労働省が公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、以下のように定義が定められています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
引用:「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(厚生労働省)
つまり、サービス提供者に対する要求の伝え方や態度が社会的に見て適切かどうかが判断基準となります。
法人営業におけるカスハラの実態

出典:「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」(日本労働組合連合会)
日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」では、約6割の人が過去3年間でカスタマーハラスメントを受けていることが明らかになっています。
受けたことのある被害には、次のようなものが挙げられました。
営業担当者に対して暴言を吐く
営業担当者に対する暴言はカスタマーハラスメントです。例えば「お前は仕事ができない」や「お前のせいでプロジェクトが失敗した、どうしてくれるんだ」といった威圧的な言葉などが該当します。
このような発言がエスカレートすると、名誉棄損罪や侮辱罪、恐喝罪に該当する可能性があります。最悪の場合は逮捕されるケースも。相手の人格を否定したり脅したりする発言はカスハラの代表例です。
弁償など過剰な要求をする
契約範囲を超えた過剰な要求もカスタマーハラスメントです。例えば、軽微なミスに対して弁償を求めたり謝罪文の提出を迫ったりするなどの行為が該当します。
相手に責任を押しつけるような要求や自社の都合を無理やり押し通そうとする行為は「不当な圧力」です。
SNS上で誹謗中傷する
営業担当者の対応に不備があることを理由に、企業名や個人名を明示した上で評判を落とすような悪意ある投稿(正義を振りかざした投稿)をする人も増えてきました。
このような誹謗中傷の投稿は、匿名であっても名誉毀損や業務妨害にあたる可能性があります。営業担当者の対応に不備がある場合でも、公の場で特定の人物や企業を攻撃するのはカスハラです。
接待の場でのセクハラをする
接待や会食の場でセクシュアルハラスメントが発生することがあります。取引先との関係を円滑に保つために会食を開くのは問題ありませんが、女性社員に対して特定の席に座るよう指示し、お酌を強要するなどの行為はカスタマーハラスメントです。
「仕事だから仕方がない」と我慢してしまう社員が少なくないため、表面化しにくいという厄介な側面を持っています。しかし、セクハラは会社の安全配慮義務にも関わる深刻な問題です。
取引先によるカスハラが発生する原因

日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」では、先述の通り、約6割の人が過去3年間でカスタマーハラスメントを受けていることが明らかになっています。
取引先によるカスハラが発生する原因は、発注者が取引関係における優位性を誤解してしまうことです。取引先や担当者に対して過剰な要求が通るという心理が働いています。
また、受注者が顧客満足や売上維持のために無茶な要求にも応じてしまうと、発注者が当然のことだと受け取ってしまい、要求がエスカレートしていきます。このような積み重ねが、ハラスメント行為の常態化を招いてしまうのです。
カスハラ発生時の対応方法

カスタマーハラスメントを受けた場合は、次のような対応を意識することで撃退できます。
相手の話を聞く
まずは、相手の話に耳を傾けましょう。こちらに原因がある場合は謝罪して、何が原因で問題が発生したかを確認します。
初期対応でクレーマーと決めつけてしまうと、相手の怒りを逆撫でしてしまい関係が悪化する恐れがあります。誠意を示すだけで、落ち着いて話し合いができるようになることもあるため、まずは相手の話をじっくりと聞きましょう。
過剰な要求は受け流す
相手から過剰な要求を突きつけられた場合は、感情的にならず冷静に受け流しましょう。相手が興奮している場合は、話を聞く姿勢を大切にして落ち着くのを待ちます。
社内に要望を持ち帰り検討する旨を伝えることで、相手を落ち着かせることができます。過剰な要求に対して応じないようにし、上司や法務部門に相談してどのように対応すべきか判断を求めましょう。
不明な点はわからないと正直に伝える
カスタマーハラスメントの対応では、曖昧な返答は控えるようにしましょう。曖昧な返答をして相手に誤解を与えてしまうと、企業の信頼を損ねてしまいます。また、言った言わないの論争になるのも不毛です。
例えば、商品の入荷時期の問い合わせに対して「多分、今月末には入荷する予定です。」と返答すると約束と違うと更なるクレームに発展してしまいかねません。
そのため「現時点では入荷時期が未定となっています。わかり次第ご連絡します。」と伝えましょう。
相手に諦めてもらう
相手は威圧的な態度や脅迫行為で過剰な要求を押し通そうとします。しかし、相手が感情的になっていたとしても、過剰な要求に応じる必要はありません。会話に平行線を作り、こちらのスタンスを崩さずに対応することが大切です。相手も要求が通らないと理解できれば、引き下がります。
もし、「インターネットで晒すぞ」「SNSに書くぞ」などの脅迫をされた場合は「お客様のご判断に対し、弊社から申し上げる立場にはありません」と落ち着いた口調で応答しましょう。動じない態度を示すことで、相手を落ち着かせることができます。
警察を呼ぶと伝える
相手が引き下がらず、話し合いが続くようであれば「これ以上の対応はいたしかねます。警察に相談させていただきます」と伝えましょう。このように伝えると、「警察を呼ばれるのは面倒だ」と感じて態度を改めます。
万が一、態度を改めない場合は本当に警察を呼ぶのも選択肢のひとつとして覚えておきましょう。
カスハラ防止条例と予防策
2025年4月1日から「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されています。
カスタマーハラスメントの深刻な状況への対応、周知を目的として条例が制定されたため、企業側もカスハラ予防に取り組みましょう。ここではカスハラの予防策を5つご紹介します。
カスハラ対応のルールを整備する
カスタマーハラスメントに対して適切に対応するためには、統一化されたルールが必要です。ルールを整備しなければ、部署毎に対応基準が異なると取引先に不信感を与えてしまいかねません。
また、社員の対応にもバラつきが出てしまいます。そのため、カスタマーハラスメントに関するルールを決めてマニュアル化しておきましょう。
そして、メールや掲示板、研修などでマニュアルの存在を周知することでトラブルが発生した際に慌てずに対応できるようになります。
メンタルヘルス対策を行う
悪質なクレーマーは業務妨害だけでなく、人格を否定することもあります。このような被害に遭った従業員が心身の健康を損ねてしまわないように、メンタルヘルス対策を行うようにしましょう。
顧客対応業務から外すなどの対策だけでは不十分で、カウンセラーによる面談や休養を取るなどのメンタルケアが不可欠です。また、再発防止の観点からカウンセリングを受けやすい環境を整備しておきましょう。
このようなサポート体制を整備することで、従業員が安心して働けるようになります。
ハラスメント研修を実施する
カスタマーハラスメントを予防するためにハラスメント研修を実施しましょう。
従業員1人ひとりが「取引先からの過剰な要求もハラスメントも対象となる」という認識を持ってもらうことが出発点です。研修でカスハラの事例や初期対応、対応時に注意すべきことなどを教えましょう。従業員が正しい対応方法を知っておくことで被害を防ぐことができます。
相談窓口の設置
カスタマーハラスメントを早期に発見し、企業として適切に対応するためには、従業員が声をあげられる相談窓口が欠かせません。
被害を受けた従業員が孤立を恐れて相談できず我慢し続けることがないように、匿名で相談を受け付けるなど相談のハードルを下げる工夫をしましょう。
警察や弁護士と連携する
カスタマーハラスメントを防止するためには、法務部門や外部の専門家(警察や弁護士)との連携が欠かせません。例えば、弁護士と連携すれば、専門的な視点からアドバイスを得ることができ、どのように対応すればよいかわかるようになります。
また、相手の過剰な要求に対応できない旨を説明する際も、弁護士の見解からと伝えれば説得力が上がります。相手が感情的になり被害が止まない場合は警察を呼ぶと丸く収まることが大半です。
まとめ
カスタマーハラスメント(カスハラ)は顧客や取引先からの常識を逸脱した迷惑行為を指します。このような迷惑行為は、サービス提供者(従業員)の心身に深刻な負担を与える可能性があるため適切に対応することが大切です。
この記事では、カスハラ発生時の対応方法やカスハラの予防策をご紹介しました。ぜひ、この記事を参考にしながらカスハラに備えましょう。
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