顧客からのお問い合わせには顧客ニーズが潜んでいます。顧客ニーズを把握してマーケティング施策や営業提案、サービス改善に活かせば、顧客ロイヤリティを上げ、さらにはLTV(顧客生涯価値)を最大化できるでしょう。
そのため、お客様の声を集める企業が増え、「VOC活動」の動きが高まってきているのです。そもそもVOCとは何なのでしょうか? 今回はVOCについて詳しく解説します。
※この記事は2023年4月10日に公開したものを加筆して更新しています
VOCとは?ビジネスにおける意味と役割
VOCとはVoice of Customerの略で「お客様の声」「顧客の声」という意味です。
VOCを収集・分析することで、顧客が自社に何を求めているのかを把握できるようになり、サービス改善や業務改善が行えるようになります。
企業が顧客の不満に気づくことは容易なことではありません。しかし、近年ではデジタルツールの普及により、顧客の声が聞きやすくなりました。そのため、VOCを収集・分析して業務改善に取り組む企業が増えてきたのです。
VOCマーケティングとは?VOCを収集・分析するメリット
VOCを収集・分析すると、次のようなメリットがあります。
顧客ニーズを捉えた施策を打てる
VOCを収集・分析すると、顧客ニーズ(顧客の中にある理想と現実のギャップを埋めたい欲求)を把握できるようになります。このような顧客ニーズを捉えた施策を打つことで、LTVを最大化でき売上アップが見込めるようになるのです。
例えば、パソコンの購入を検討しているお客様の顧客ニーズが「処理速度の速いPCが欲しい」だったら、処理速度を改良し、従来品や競合他社との比較広告でアピールすることで商品が売れやすくなるのは明らかです。
このように、顧客ニーズを捉えて施策を打てるようになることがVOC収集・分析のメリットです。
LTV/ライフタイムバリュー とは?
LTVとはLife Time Valueの略で「エルティーブイ」「ライフタイムバリュー」と読みます。
「顧客生涯価値」と訳され、ある顧客から、生涯にわたって得られる利益の総額を算出するための指標のことを表しています。
1回の取引で得られる利益だけでなく、2回目以降の取引で得られる利益も含まれます。
新規顧客獲得の難しさから、既存顧客の維持の重要性が増し、LTVが重視されるようになりました。
LTVの一般的な計算式は次のように算出されます。
LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)
この6つの要素を向上させることで、LTVを高めることができるのです。
◆関連用語
自社の課題を明確にできる、意思決定に役立つ
VOCを収集・分析すると、自社の課題を明確に把握できるようになります。お客様の声の中には、ポジティブな意見ばかりではなく、ネガティブな意見もあります。ネガティブな意見を聞くと落ち込むかもしれませんが、自社の課題を発見する機会となるのです。
ネガティブな意見を真摯に受けとめず放置すると、お客様はサービスを利用する上で不満を募らせていきます。不満が蓄積され炎上すると企業イメージが損なわれてしまいます。
このようなリスクを回避するためにも、VOCを収集して自社の課題を把握し、改善していくように努めましょう。
顧客満足度を向上できる
VOCを収集・分析して商品やサービスの改善に役立てれば、顧客ロイヤリティを上げられます。顧客ロイヤリティとは、お客様が自社商品やサービスに抱く愛着や信頼のことです。
顧客ロイヤリティが高ければ、既存顧客のリピート率が上がり、LTVの最大化を実現できます。それだけでなく、自社製品から他社製品に移行する心配もなくなり、売上が安定しやすくなります。
新商品の開発ができる
VOCを収集・分析すると、自社商品やサービスに足りない要素を聞き出すことができます。
「こんなサービスがあれば嬉しい」「このような機能を搭載して欲しい」などのお客様の声を参考に、新商品やサービスの開発を行うことも可能です。お客様の声から新規事業を手がける企業も存在します。このように新商品の開発に役立てられることもメリットです。
VOCを収集する方法
VOCを収集・分析するメリットをご紹介しましたが、どのようにお客様の声を集めるのでしょうか? ここでは、VOCの収集方法について解説します。
コールセンター
コールセンターには、お客様からお問い合わせが入るため、ダイレクトに声を聞くチャンスとなります。言葉だけでなく、お客様の声のトーンから感情を読み取ることもできるため、質の高いVOCを収集できます。
インタビュー
自社の商品やサービスを購入してくれたお客様にインタビューすると、他社商品より自社製品を選んだ理由や得られている効果、改善ポイントなどを聞き出せます。インタビューもお客様の声を直接聞けるため、質の高いVOCを収集できます。
アンケート調査
お客様にアンケート調査を行うことでもVOCを収集できます。しかし、アンケート調査は、多くのお客様の声を回収できる反面、真実性に欠けるというデメリットがあります。
なぜなら、企業を傷つけないように良い回答する人や不真面目に回答する人がいるためです。しかし、いちどにたくさんのVOCを収集できるため、定量的な評価ができます。
SNS
SNSの普及により、誰でも気軽に情報発信できるようになりました。X(旧:Twitter)やFacebookなどのSNSから自社に対するお客様の声を収集することができます。
収集できる情報量は多いですが、顧客1人当たりから得られる情報量は少ないです。しかし、本音をキャッチできるため、SNSも活用すると良いでしょう。
ECサイトのレビュー
ECサイトのレビューには、商品を購入してくれた人の声が集まっています。実際に商品を購入してくれた人の貴重な声のため必ず収集するようにしましょう。低い評価のレビューがあれば、自社の課題として捉えて改善していくようにしましょう。
VOCを分析する方法
次に集めたVOCを分析する方法をご紹介します。
エクセルやGoogle スプレッドシートなどに都度書き込んでいく方法もありますが、収集・分析を自動化する技術も登場しています。
音声認識技術
音声認識技術とは、電話などの音声データを解析する技術のことをいいます。
コンタクトセンターの会話のやり取りをテキスト化して、アフターコールワーク業務を効率化するツールが開発されています。それだけでなく、音声の抑揚などで顧客の感情を分析できるツールなども開発されています。
この技術を活用すれば、コールセンターで収集できるVOCの質を高められます。
テキストマイニング
テキストマイニングとは、テキストから有益な情報を抽出する技術のことをいいます。
SNSやアンケート調査で大量のデータを収集して、頻出するワードを抽出すれば顧客の傾向が把握できるようになります。とくに、テキストデータが大量にある場合に効果を発揮する分析手法です。
VOC調査の手法と流れ
VOCの収集方法、分析方法を把握した上で活動を進めていきましょう。ここではVOC活動の流れをご紹介します。
目的を明確にする
最初にVOC活動の目的を明確にしましょう。なぜなら、目的を定めないとVOC活動が無意味になってしまうためです。また、目的を明確にすれば仮説検証がしやすくなります。VOC活動の目的には、以下のようなものがあります。
【VOC活動の目的の例】
- 既存顧客にリピートしてもらうためにサービスを改善する
- 最適なマーケティング施策を見つけるためにVOCを収集する
- 他社製品が選ばれてしまう理由を把握する
社内体制を構築する
次にVOC活動を推進するための社内体制を構築します。
社内体制を構築する場合には、お客様の声を直接聞く営業部門やカスタマーサポート部門と、お客様の声を活用するマーケティング部門や開発部門の連携が欠かせません。
そのため、CRM(顧客管理システム)を活用して各部門で情報共有できる状態にしておきましょう。また、VOCの収集・分析の責任者を決めておきます。
VOCツールを導入する
次にVOCを収集・分析するためのツールを導入します。VOCが収集できたら、お客様のニーズを把握するために分析していきます。しかし、データ分析を人力で行うのは大変です。そのため、VOCの分析ができるツール(音声解析・データマイニング・データ分析など)を導入しておきましょう。
運用を開始する
VOC活動の準備ができたら運用を開始します。営業部門やカスタマーサポート部門などお客様の声を聞く部門などからデータを収集し、分析していきます。分析結果をデータ活用する部門に渡して、サービス改善や業務改善していきましょう。
また、業務改善したら終わりではなく、効果検証することが大切です。効果検証して、最適な施策を打つようにしましょう。
VOC収集・分析におすすめのツール
VOC活動では収集・分析ツールの導入が欠かせませんが、どのようなものがあるのでしょうか? 次にVOC収集・分析におすすめのツールをご紹介します。
MiiTel
MiiTelはAI搭載型IP電話です。VOC分析を効率化できる「音声解析」「テキストマイニング」「データ分析」が1つで行えるツールで、1,650社に導入されています。
同製品の魅力は、電話の音声解析ができることです。電話のやり取りデータから抑揚など解析できるため、お客様の感情を読み取れるようになります。また、電話内容の文字起こしが自動化でき、どのような内容が多いかテキストマイニングすることも可能です。
そのため、コールセンターなどでVOCを収集したいという方におすすめのツールとなっています。
見える化エンジン
見える化エンジンは、累計導入社数1,600社以上のテキストマイニングツールです。SNSやお問い合わせ、アンケート調査から得たデータを解析できます。
このツールを活用すれば、顧客ニーズを把握できるだけでなく、多くの顧客の共通点なども把握できるようになります。また、急騰キーワードを検知することも可能です。
顧客の声の変化をモニタリングできるため、消費者の興味・関心の移行などもキャッチできます。そのため、大量のデータを解析したいという方におすすめのツールです。
sAI Voice Analyzer
sAI Voice Analyzerは、コールセンターに多くのお問い合わせが寄せられる根本的な原因を探るためのツールです。コールセンターに寄せられるお問い合わせを抽出して、FAQで自己解決可能なお問い合わせをコンテンツ化していきます。
このような取り組みで、コールセンターに寄せられるお問い合わせを削減していくのです。そのため、コールセンターの業務効率化を実現したい方におすすめのツールです。
口コミコム
口コミコムは、インターネット上に散らばっている口コミを一元管理できるツールです。一元管理した口コミを分析することで、お客様の傾向を把握しサービス改善ができるようになります。
また、ツール上でお客様に対して、クーポン配布やセール告知ができます。例えば「〇〇は美味しいけれど、値段が高い」という口コミが多ければ、その商品の値引きクーポンを配布すれば来店促進ができるでしょう。このように、口コミを活用して業務改善や購買促進したい方におすすめのツールです。
音声認識ソリューション「transpeech」
出展元:https://www.trans-cosmos.co.jp/company/video/transpeech.html
トランスコスモス株式会社による音声認識ソリューション「transpeech」は、トランスコスモス社のコンタクトセンター運用ノウハウを活かしたVOC収集・分析ツールです。
通話解析とナレッジ支援により、クレームなどの早期発見をはじめ、トラブルや誤案内などのリスクを防止します。また、問い合わせ分析と会話のテキスト化によって、VOC収集・分析はもちろん後処理時間を適正化することもできます。
まとめ
デジタルツールの普及により、VOC(顧客の声)が収集しやすくなってきました。VOCを収集・分析することで、顧客ニーズが把握できるようになり、満足度の高い商品・サービスが開発できたり、顧客対応の品質を上げたりできます。その結果、LTVの最大化が見込めるようになるのです。
今回は、VOC活動の流れについて詳しく解説しました。ぜひ、これを機会にVOCの収集・分析をしてみてください。