「CSV経営」という言葉をはご存じでしょうか? CSVとよく似た言葉にCSRがありますが、どう違うのでしょうか?
この記事ではまず、CSVの意味について解説します。さらにCSRとの違いやCSV経営に取り組むメリット、CSV経営の事例、関連するESGとSDGsについても紹介します。
この記事を読めば、CSV経営の意味やCSV経営の具体像がわかるようになります。ぜひ、最後までご覧ください。
CSV経営とは?
CSVとはCreating Shared Valueの略で「共有価値の創造」という意味です。社会貢献活動と思われることが多いですが、社会問題の解決を通じて経済的な利益に繋げるという考え方を指しています。
CSV とは?
CSVとは、Creating Shared Valueの略であり、営利企業が社会問題を解決することで経済的価値と社会的価値を共に創出しようとする考え方のことです。
経営学者のマイケル・ポーター教授によって提唱されました。
本来なら、経済効果と社会的価値の創出の両立は難しいと考えられていました。
しかしこの考え方は、両者の両立、ましてやそれ以上の成果をめざそうというものです。
CSVは、CSR(自社の利益を追求するだけでなく、社会の課題に目を向けなければいけないという考え方)と混同されてしまいます。
CSVとCSRの違いは、事業の一環の社会課題なのか事業とは別の社会課題なのかです。
CSVの方が積極的に社会課題に取り込むことで、利益を損なわず持続可能な経営を実現できると言えるでしょう。
◆関連用語
企業の経済的価値と社会的価値の両立
CSV経営では、企業の経済的価値と社会的価値の両立をめざします。さらには経済的価値と社会的価値を高めた相乗効果により、企業価値を最大化することも期待されています。
CSVの考え方が生まれたのは2011年
CSVは、2011年にアメリカの経営学者マイケル・ポーター氏とマーク・クレマー氏が提唱した考えです。
マイケル・ポーター氏らによると、CSVには「製品と市場を見直す」「バリューチェーンの生産性を再定義する」「企業が拠点を置く地域に支援する産業クラスターをつくる」という考えがあります。
CSVとCSRの違い
CSVと似た言葉にCSRがあります。CSRは「Corporate Social Responsibility」の略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳されます。CSVよりもCSRの方が耳なじみのある方も多いのではないでしょうか。
CSRとは、企業が経済活動だけでなく、地域社会や環境などと共存し、さまざまなステークホルダーからの信頼を得る活動のことをいいます。CSRは企業評価や企業イメージ・知名度・ブランドを高めるための活動でもあるのです。
CSRは事業と直接関係のない活動も多く、コストと考えることもできます。CSVは事業活動を通じて、企業の経済的価値と社会的価値を高めます。企業の経済的価値、すなわち利益に繋がるかどうかという点において、CSVとCSRは大きく違うのです。
SDGs とESGとの違いも知っておこう
CSVやCSRとともに、SDGsやESGという言葉も使われます。それぞれ関わりがあるので、SDGsとESGについても簡単に説明します。
SDGsとは
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
2015年9月の国連サミットで採択され、2030年までに持続可能な世界を達成するための国際目標です。17のゴール・169のターゲットが設定され、地球上の「誰一人も取り残さない」ことを誓っているのが特徴です。
ESGとは
ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を組み合わせた言葉です。企業が長期的に成長を続けるためには、環境・社会・ガバナンスの視点が必要だという考え方です。
環境には気候変動・生物多様性・水資源・廃棄物など、さまざまな課題があります。社会ではダイバーシティ・人口問題(少子高齢化など)・労働問題(児童労働など)・格差(所得・貧困層など)の問題を抱えています。
ガバナンスとは企業統治のことです。企業不祥事が社会に悪影響を及ぼす事例は、後を絶ちません。法令順守や情報公開、社外取締役の任命など、ガバナンスの強化が求められています。
CSVとCSRに取り組むメリット
ここではCSV経営とCSR経営に取り組む企業のメリットをそれぞれ紹介します。
CSVに取り組むメリット
CSV経営をすることで、社会問題の解決に取り組んでいる企業というブランディングができます。
たとえば気候変動に伴う地球温暖化などに積極的に取り組む企業は、ステークホルダーからも信頼されます。ブランド力が向上すれば新たな顧客の獲得も可能です。
また、CSVは単なる社会貢献ではなく、事業によって社会問題を解決することが目的です。社会貢献活動として行われるCSRと大きく違う点はここにあります。
事業を通じて社会問題を解決していくことは、CSRよりもCSVの方が企業価値を高める意味合いは強くなるでしょう。
CSRに取り組むメリット
企業イメージの向上が、CSRの大きなメリットです。
たとえば企業が環境問題などに積極的に取り組んでいることについて広報をすれば、企業イメージのアップにつながります。企業イメージがアップすれば、その企業の商品に対する信頼度などにも影響します。そして、その信頼は商品の購買に影響するといえるでしょう。
CSVとCSRの企業事例
それではCSVとCSRに取り組む企業の事例をいくつか紹介します。
CSV経営をしている企業の事例
CSV経営の事例をいくつか紹介します。
ネスレ
ネスレは「個人と家族」「コミュニティ」「環境」の3分野に長期的な目標を設定。これらの目標の背景にはSDGsも見据えています。
例えば「個人と家族」では、食物アレルギーでミルクが飲めない乳児のために、牛乳タンパク質アレルギー乳児向け調整粉乳を開発。
また、5,000万人の子どもたちの健康的な生活を支援するために、栄養教育をしています。世界の約40のネスレブランドが参加し、2億2,500万人以上の保護者が参加しました。
「コミュニティ」では、カカオ農家の変革を推進しています。背景には「すべての農業従事者が生活維持できる収入を得ること」を重視していることがあります。
2020年8月に開始された試行プロジェクトには、1,000人の農業従事者が参加。適切な農業慣行を導入し社会や環境にプラスの成果を実現。また、児童労働対策を実施した参加者には奨励金を支給するアクションもしています。
「環境」では、人や地球に配慮した植物由来のタンパク質製品を開発。また、2025年までに製品パッケージを100%リサイクル可能、またはリユース可能にする目標を設定しています。
引用:ネスレ「サステナビリティ」
キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングス株式会社は、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」ことを目指しています。そして、酒類メーカーであることを前提に「健康」「コミュニティ」「環境」の分野でCSVに取り組んでいます。
「健康」では、安全・安心でおいしさを楽しみながらセルフケアできる飲料・食品の開発。新薬の創出を通じて、お客さまの心と体の健康とクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献することを目指しています。
「コミュニティ」では、商品やサービスを通して、すべての人々が喜びでつながる社会を共創することに取り組んでいます。
「環境」では、自然と人にポジティブな影響を創出することで、心豊かな社会と地球を次世代につなぐことを目標に設定。具体的には持続可能な範囲での原料農作物の調達などです。その他、容器包装の軽量化、リサイクル材やバイオマスなどの使用もあります。
引用:キリンホールディングス株式会社「社会との価値共創」
CSR経営をしている企業の事例
CSR経営の成功事例をいくつか紹介します。
富士フイルムグループ
富士フイルムグループは持続可能な社会への取り組みとして、持株会社になった2006年にグループとしての企業理念とビジョンを制定。
また、企業理念を達成するために、企業行動憲章・行動規範を制定し、全従業員に徹底しました。そして、全従業員が日々の業務の中でCSRを意識して行動できるように、CSRの考え方を明確にしています。
とくに写真フィルムは、製造時に「大量の清浄な水と空気」が不可欠であることなどをCSRの原点にしています。中期CSR計画では「環境」「健康」「生活」「働き方」を分野にし、それぞれ重点課題を設定。
環境の重点課題は、「気候変動への対応」「資源循環の促進」「脱炭素社会の実現を目指したエネルギー問題への対応」「製品・化学物質の安全確保」です。2030年までの目標として、CO2排出の50%削減、水投入量の30%削減などに取り組んでいます。
引用:富士フイルムホールディングス株式会社「CSRの考え方と各種方針」
株式会社ブリヂストン
株式会社ブリヂストンは、2050年の将来をターゲットにした環境長期目標を設定。背景には2050年に、世界人口が70億人から90億人以上になること。経済規模はほぼ4倍になると予測されていること。自動車の台数も9億台から24億台まで増加することを予想しているからです。
環境長期目標では、「生物多様性ノーネットロス(貢献>影響)」「100%サステナブルマテリアル化」「カーボンニュートラル化」を上げています。
「生物多様性ノーネットロス(貢献>影響)」は、事業活動が与える生物多様性への影響を最小限にする。そして、生物多様性の復元など貢献活動をすることで、生態系全体での損失を相殺する取り組みです。
「100%サステナブルマテリアル化」は、資源を大切に使うことが目標です。サステナブルマテリアルとは、原材料調達から廃棄までのライフサイクル全体で、環境・社会への影響が少ない材料のことを指します。
「カーボンニュートラル化」は、パリ協定・IPCC報告書を踏まえた目標になっています。
同社ではマイルストン(2020)で、2020年の中期目標を設定して取り組みを進めてきました。取り組みの結果、2019年に目標を前倒しで達成しています。
引用:株式会社ブリヂストン「サステナビリティ」
まとめ
ここまでCSV経営の意味やCSRとの違い、CSVとCSRの導入事例を紹介してきました。
CSRは、1956年の経済同友会のCSR決議が始まりです。1980年のバブル期は企業としてのフィランソロピー、1990年代は地球環境問題、2000年代は企業不祥事。このようなタイミングで、CSRが「企業の社会的責任」として取り上げられました。
これに対して、CSVは企業の事業活動を通じて、社会課題を解決するものです。企業利益と社会貢献の両方を達成できるのが、CSVの特徴です。社会的課題を解決するCSV経営は、これからの時代、企業の重要な社会的価値になるでしょう。
BtoC企業のみならず、BtoB企業もCSVやCSRへの取り組みが重視されています。
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