営業において「ラポール」とは顧客との信頼関係のことです。オンライン営業が注目されている現在でも、顧客との信頼関係がなければビジネスは成り立ちません。
この記事では、ラポールの意味とラポールを形成するメリット、ラポールの形成方法について紹介します。顧客といまいち信頼関係ができていないと悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
営業におけるラポールの意味
ラポール とは?
ラポールとは、フランス語で「橋を架ける」という意味であり、心理学用語で親密感や繋がりのことを指します。
セラピストと患者の強い結びつきを表す言葉ですが、それをクライアントとセールスに当てはめてビジネスシーンでも使うようになったのです。
顧客と信頼関係を築くということが、顧客とラポールを築くということになります。
ラポールが築かれていない営業パーソンから商品を買いたいとは思いません。
すなわち、ラポールを築くことが売り上げに繋がると言えるでしょう。
ラポールを築くためには、単純接触効果を活用することが重要といわれており、接触回数が増えるほど、好感度が増すという研究結果もあります。
ラポールは対顧客だけでなく、上司や部下との間でも築くことができます。
◆関連用語
ラポールを形成するメリットは大きい
お互いに相手のことを受け入れていないと、本音のコミュニケーションは生まれないものです。
一方的なコミュニケーションにならないためにも、信頼関係が構築できていること、つまりラポールの形成が重要です。営業も含め、ビジネス全般においてラポールを形成するメリットがあります。
社内コミュニケーション活性化
社内の人間関係においても、ラポールを形成するメリットがあります。社内の人間関係にラポールが形成されていれば、コミュニケーションは活性化します。
逆に上司と部下の関係が悪ければ、スムースな意思伝達や報告は難しいでしょう。また、同僚との関係においても、ラポールが形成されていなければ、協力する雰囲気が生まれることはありません。
チームパフォーマンス向上
チームで新規事業のアイデア出しをする時など、自分の意見が他のチームメンバーにどのように評価されるかを気にすると、発言しにくい状況になるでしょう。
ラポールが形成されているチームでは、「こんなこと言ったらバカだと思われる」「意見を言って否定されたら嫌だ」という思考は無くなり、心理的安全性が高い状態になります。その結果、多くの意見・多様な意見が集まり、チームのパフォーマンスも高くなります。
営業業績の向上
営業担当と顧客とのラポールが形成されていれば、顧客の本音を聞き出すことができるでしょう。そして、顧客の隠れたニーズにマッチした、顧客が本当に求めている商品やサービスを提案できます。
また、ラポールが深く形成されれば、「また、この担当者から商品を買いたい」という状態になり、結果的に営業成績が向上します。
ラポールを形成する方法
それでは実際にラポールを形成するにはどのようにしたらよいのでしょうか。
ラポールを形成するには、相手との心理的な距離を近くする必要があります。そのためには、相手と自分の間に類似性や親近感を持ってもらうことがポイントです。
そのために有効なテクニックは以下の4つです。
- ミラーリング
- ページング
- バックトラッキング
- キャリブレーション
どれもすぐに実践できるテクニックなので、試してみましょう!
ミラーリング
ミラーリングとは、鏡に映ったかのように相手と同じような動作をすることです。相手が笑えば、こちらも笑う。相手がコーヒーを飲んだら、こちらも一口、コーヒーを飲むという具合です。
人間は共通点が多いほど親近感を持ちやすい傾向があります。そこでミラーリングでは相手の動作に似たことをするのです。
ただし、相手から動作をマネされていると感じると、不快に感じさせてしまうことがあります。そのため、不自然にミラーリングをしたり、やりすぎたりすると逆効果になるので注意が必要です。
ページング
ページングとは、話し方や話のペースを相手に合わせる方法です。ミラーリングは相手の動作をマネますが、ページングは相手の話し方をマネることです。ミラーリングに合わせて行うと効果が高まります。
人は自分がいちばん耳にしている言葉に慣れており、居心地がよいと感じます。そして、一番耳にしている声は、自分の話す声なのです。そのため、ページングに効果があるというわけです。
ページングで相手の話をマネるポイントは、相手の話の「テンポ」「スピード」「トーン」「大きさ」。また、ページングを成功させるコツは、相手が話しやすいような雰囲気を作ること。そして、実際に相手に話してもらい、相手の話し方をよく観察することが大切です。
バックトラッキング
バックトラッキングは、日本語では「オウム返し」と呼ばれる、相手の話したことと同じことを話すことです。バックトラッキングの目的は、相手の話をきちんと聴いていると相手に見せることです。
バックトラッキングには「相手の感情の共感」「話の確認・要約」といったポイントがあります。
相手の感情の共感では、相手が「うれしかったんですよ」と話した場合、こちらも「うれしかったんですね」と話を返すといいでしょう。相手の感情を強調してバックトラッキングをすることが有効です。
話の確認・要約では、相手の話が長くなったところで、「それはこういうことなんですね」と確認することです。「今のお話を私はこのように理解しましたが、間違っていませんか?」と要約することもよいでしょう。
バックトラッキングをすることによって、相手は自分の話をよく聴いてくれていると感じます。そのため、ラポール形成につながります。
キャリブレーション
キャリブレーションは校正・調整などの意味を持つ英語です。測定器の調整をする時によく使われます。ラポール形成の場面においては、相手の表情・雰囲気などから相手の様子を探ることです。
言い換えると、相手の言葉以外の情報から相手の気持ちを知ることです。たとえば新しい企画の話をしている時は乗り気なのに、いざ契約の話になると声のトーンが下がる。このような場合は、急いでクロージングをせずに信頼関係を築く方に力を入れる、というように使います。
ラポール形成は営業に必須のスキル
営業は顧客に情報を提供することで購入意欲を高め、最終的には商品やサービスを購入してもらうことが役割です。
情報を通じて顧客の感情が動き、思考がスタートし、最終的に決断します。この決断に必要な情報を提供することが営業の役割です。
しかし、現代では営業と顧客の関係は大きく変化しています。営業とラポールの関係について深堀りしてみましょう。
インターネットで情報収集ができるようになった
とくにBtoBの領域では、営業担当が企業の担当者にとっても唯一の情報源でした。しかし今は、製品情が知りたいと思えば、まずはインターネット検索をするでしょう。さらに他社の製品と比較したり、場合によってはマイナスの情報も手に入れることができます。
顧客と営業の情報優位の関係性が崩れた、と言ってもいいでしょう。そのような状況の中で求められるのがラポールなのです。
従来、営業はよいプレゼンをして、どのようにクロージングをするかに力が置かれていました。しかし、今はどうやってラポールを形成するかに重点が移ってきたのです。
顧客の意思決定方法の変化
顧客の意思決定も変わってきました。「何を買うか」から「誰から買うか」を重視する傾向にあります。
さまざまな製品がコモディティ化により、似たような製品になりました。つまり、どうせ似たような製品を買うなら、あの人から買いたいという心理が高まってきたのです。
まとめ
従来の「プレゼン力」「クロージング力」などの営業スキルは変わらず重要です。
しかし、いま求められているのは顧客を理解する姿勢です。そして顧客も、自分のことを理解し、自分の話を真剣に聞いてくれる営業を求めるでしょう。
つまり、オンライン営業が主流になったとしても、ラポール形成は営業に必須のスキルだといえます。
他にも営業テクニックはたくさんあります。「営業トーク力を上げるオープンクエスチョン・クローズドクエスチョンとは?」「インサイドセールスにおけるクロージングとは?契約を勝ち取るポイントとトークテクニック」も合わせてご覧ください。