「パイプライン」とはプロセスのことを指し、パイプライン管理とはマネジメント手法のことを指します。
従来の営業活動は、各営業担当者の勘や経験、判断に依存する範囲が広く、案件管理も営業担当者の感覚に頼るケースがほとんどでした。しかし、SFA(営業支援ツール)などの導入によって営業プロセスが可視化され、チームとしての成果が求められるようになっています。
そんなシーンで活きてくるのがパイプライン、そしてパイプライン管理です。今回は、営業のパイプライン管理の概要やメリット、導入方法などについて、詳しく解説していきます。
ビジネスで使われる「パイプライン」とは?
パイプライン とは?
営業のパイプライン管理を行う意味
パイプライン管理を行えば、営業プロセスごとの案件を把握して俯瞰できるようになります。特定案件の進捗状況や商談履歴を参照したり、失注した案件の詳細を確認したりすることも可能です。
案件の情報を総合的に把握できれば、目標の達成状況に応じて臨機応変に営業方法を変えることができます。また、案件管理の属人化を防ぎながら、チーム全体の進捗管理もできるようになります。
営業のパイプライン管理を行うメリット
パイプライン管理を行う主なメリットは、次の3つです。
営業部門の「強み」がわかる
パイプライン管理を行えば、反響率の高いアプローチ手法や、クロージングの成約率が高いハイパフォーマーなどを特定できるようになります。顧客の反応が良い営業ツールやカタログの把握にも役立つでしょう。
自社の強みが把握できれば、そのポイントに営業力を集中させて、さらなる成約率の向上を図れます。成約率の高い営業担当者が他の営業担当者にアドバイスをすれば、営業力の底上げにもつながります。
成約ベースでの案件管理とは異なるため、反響の良くないアプローチ手法だけを改善して営業活動全体の効果を高めることもできます。
営業目標や予算を立てやすい
すべての案件が可視化されればマネージャー側の案件管理も容易になるため、目標や予算が立てやすくなります。確度の低い案件や成約までに日数を要する案件を把握すれば、中長期的な受注見込みも管理しやすくなるでしょう。
社員の成長促進につながる
各営業担当者の成績を可視化することによって、各自が強みや弱みを把握できるようになります。自分の成績を客観視できれば、成長促進にもつながるでしょう。従来のような精神論でなく、各営業担当者の強みや弱みを数値化したフレキシブルな教育も実現します。
営業のパイプライン管理を行う上での注意点
パイプライン管理では、次のような点に注意する必要があります。
プロセスが細かすぎると逆効果
プロセスを細分化しすぎてしまうと、ミクロな部分に注力しすぎて本質的な課題が発見できなくなる恐れがあります。パイプライン管理をするプロセスは、正確な全体像が捉えられる程度の粒度に留めておいた方が無難です。
データ管理のリソースがかかる
データの集計や分析に時間がかかりすぎると、パイプライン管理のメリットが活かせません。情報の可視化と共有をするためにはデータ入力が必須です。しかし、入力作業そのものが非効率で人件費の無駄になる可能性はあります。データの入力と管理をスムーズに行うためにはSFAなどのツールを活用した業務効率化を検討した方がいいでしょう。
ネガティブな部分に注目しがち
全体や個人の進捗が可視化されるので、未達や遅れなどに対する評価が厳しくなる傾向にあります。しかし、パイプライン管理の本質は、チームとして目標を達成することです。ネガティブな部分にだけ注目せず、前向きな評価を基本にしましょう。
営業にパイプライン管理を導入する流れ
ここからは、パイプライン管理導入までの具体的な流れをご紹介していきます。
1.営業プロセスの可視化
まずは自社の営業プロセスを可視化します。可視化のためには、営業活動の流れを標準化しなければいけません。営業担当者によって手法が異なるケースも多いため、細かく可視化できるように過不足なく手順を抽出していきましょう。細分化した項目は、しっかりと定義に落とし込んでください。
2.各プロセスの状況、個人の案件を把握
プロセスの細分化が完了したら、各営業担当者が抱えている案件がどのプロセスにあたるのか把握します。受注までの営業活動を時系列に並べて、必要な管理項目をピックアップしていくといいでしょう。
案件数や商談件数など、数値化できるものはすべて数値にして管理する方が、より認識の相違を防げるためおすすめです。なお、各営業担当者が抱えている案件状況の把握は、SFAなどの営業支援ツールを用いる方法とExcelやGoogleスプレッドシートで管理する方法があります。
SFAの機能については、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
3.データ分析→課題のピックアップ
次に、数値をもとにデータを分析して、各プロセスの課題を確認します。とくに注意したいのは、下記のようなポイントです。
- 見込み商談数は足りているか
- 業務が属人的になっていないか
- 歩留まりが高い工程はないか
など
このような数値を比較すれば課題が明確になるだけではなく、強化すべきポイントも掴めるようになります。
4.改善案の作成
課題を明確にしたら、改善案を検討・作成していきましょう。営業担当者個人の課題は、研修やOJT、1on1、ロープレを通じてスキル向上をめざすのが得策です。
営業組織全体としての課題は、マネージャー先導によるチームでの取り組みが求められます。商談時のマニュアルが確立されていない場合は、成果の高い営業担当者の手法を参考にしながら改善を進めましょう。
5.PDCAを繰り返す
課題や強みを発見したら、チーム内で情報を共有して改善や標準化をしていきます。PDCAを回す作業は日常的に繰り返し行っていきましょう。
短期的な課題の発見と改善策の追求を反復することによって、外部環境の変化にも柔軟に対応できるチーム作りをすることができます。各営業担当者のスキルやモチベーションも常に変化するため、継続的な検証と改善が効果を大きくするのです。
パイプラインとは?まとめ
営業の「パイプライン」とは、営業における案件受注までのステップ・プロセスを可視化したものです。
営業スタイルの変革に伴って、営業活動一連の流れを管理する方法にも見直しの余地が生じています。インターネットが普及し、消費者の価値観や購買プロセスが多様化している近年では、勘や経験に頼った営業マネジメントから新しいマネジメント手法へのシフトが求められているのです。
適切なパイプライン管理は、営業課題に対する最適なアクションプランの立案にも役立ちます。企業の中長期的な成長を実現するためにも、パイプライン管理を導入して効率的な営業活動と課題の改善を実現しましょう。
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